ピクニック日和 3
アリス・ド・デニム王女の伯爵家次男との婚約に始まって、マルーン王の恭順が条件となっていた。それでも今戦を仕掛けてきている、蛮族達の条件よりはまだましだったため。其れを姫様は飲むことに為たのである。
これは後から判ったことであるが、随分前から打診されていたことで、これまではマルーン王が突っぱねていたことだった。国力から言ったなら、争うことも無く、同格として合併為た方が条件が良い。その決断を、マルーン王はしていた。侯爵程度の立場での合併を考えていたのだが、戦時での交渉は困難で、いつの間にか併合されることが、条約に盛り込まれることになってしまった。
勿論これでも、隣国の蛮族達に蹂躙された挙げ句。侵略支配されるよりは、何十倍も条件が良い。屈辱的な物とは言え、まだ殺されるよりはましなのだ。
只、ヘクター・リントンは、完全にはめられたと考えている。蛮族達の国と、バイシス王国と間に密約があったとは思わないが、今回のことで、バイシス王国は焼け太りを為たのである。其程犠牲を出さずに、マルーンを併合することが出来た。
マルーンが落ちれば、バイシス王国は王都までは僅かな距離になる。従って、彼らはどのみち援軍を出さなければ、自分達の首元に蛮族の剣が突きつけられることになる。
マルーン王国は、長いこと同盟関係を遵守していた。気の良い隣人が、落着いて判断できないことに、つけ込んだのである。
バイシス王国の援軍は、マルーンの命脈を長らえることになった。其れと引き替えに、マルーン王家は伯爵家として、バイシス王国の一臣下となった。
王家は臣下となった、デニム家から少しずつ力を削り取る。国としての体裁をとっていた、マルーンの力が脅威と見えているのだ。だから、デイモン・デイクラインなどという、できの悪い男と結婚させたのだ。それ以来、このデニム家にはあまり良いことが起きない。
他聞順調に、バイシス王の支配は進んでいるのだ。それに抗うことの出来る、先代は既に無く。彼にとって、最も大事な姫様は、王家の臣下としての振る舞いを、するようになってしまった。既にマルーン王国は、この地上の何処にも存在していない。年寄りの記憶の中にしか、残っては居なかった。
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