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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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夜の散歩 4

読んでいただきありがとうです。

 あたしは巨大な馬車の堅い座席に一郭に、デニム伯爵夫人の柔らかな身体と、父ちゃんの堅くてごつい身体に挟まれている。デニム伯爵夫人の方からは、薔薇の香りがする。父ちゃんの方からは汗の臭いがする。思わず身体洗ったか聞きたくなった。加齢臭はまだしては来ないけど、せめてもう少し念入りに清めてほしかった。

 ちなみにこの馬車の乗っているのは、伯爵夫人とあたしを覗いてみんな危険な雰囲気の、黒い皮鎧を着ている。その装備は、全員バラバラで、短剣や何も持っていない人まで居る。もっとも、大きな武器の類いは、後方の荷台に乗せている。

 ちなみにこの馬車に乗って来た男達は、顔は隠しているし自己紹介はしてくれなかった。追々判ってくることもあるかなとは思うけれど、父ちゃんの言う影働きをしている人たちかも知れない、と思ってしまう。ただ、この馬車の御者席に乗っている人は、顔は隠してはいるけど、執事さんである事は判った。姿勢の良さと、全く足音を立てない独特の歩き方に気付いちゃった。

 ニックもたまに同じ歩き方をしていることがある。あいつと同じような技術を持っているのだろう。今のあたしって、前世の時より色々とスペック上がってない。今回は、自分でも勤勉だと思う。あの頃は、アイドルと彼氏のことで頭いっぱいだった。もう少し勉強しておけば、溝少し使える人間になっていたと思う。

あの歩き方は、ゲームの悪役令嬢も出来たみたいだから、あたしと同じで、ニックに習ったんだろう。ちなみに、手先は器用なので、かぎあけはとくい。少なくとも、デニム家の部屋なら一分で空ける自信がある。誰にも言わないけどね。

 この馬車の同乗者は、全部で十人。周りを囲むようにして、護衛として騎兵が四人いる。馬車を使ったとしても、このだらだらとした下り坂は一時間半で領都の南門に着く。月の半月は、相変わらず地上を明るく照らしている。その上、馬車の御者席には、かなり大きなランタンがぶら下げられており。少しあたしには邪魔かな。

 突然、馬車が歩みを止めた。

「奥様、何者かがこの馬車を避けるように、下草の中に隠れたようです。少々時間を頂きます」

 くぐもってはいるけど、ヘクター・リントンさんの声である。あたしの勘は間違いないのだ。

 静寂があたりを支配する。風の音と、虫の音と馬が時々出す音だけが聞こえる中で、たぶん周りを囲んでいる騎兵の人たちが、腰の剣を抜く音が聞こえる。こんな所を一人で、こんな時間に歩いているような人間は、真面では無いはずで。少し後ろ暗い人物には違いないのだ。

「あまり時間を取られるわけには行かないわね。速やかに、相手を拘束してちょうだい」

「おい、リコ。おまえの真価を見せておくか」

 父ちゃんが言った。悪い笑顔をしている。

「夜襲にはこいつがいると、ものすごく便利だって頃を教えてやるよ」 

「本当に大丈夫なのですか?」

「俺の言うことを信じて貰いましょうか。奥様」

「では、貴方の能力を証明してください。くれぐれも怪我の無いように」

 デニム伯爵夫人は、少し迷った表情になったけれど、すぐに決断したのか、私を軽く抱くと言った。そのぬくもりが、この暑い夜中なのに、悪い気がしない。薔薇の香りがなんとも言えない気分にさせる。

「不審者の対応は、新入り二人に任せます。ランプの明かりはシャッターを閉じておきなさい」

 デニム伯爵夫人は、命令を出すのになれきった声音で言った。すぐに、ランプの明かりが縛られて、辺りが暗くなる。

「五分だけ時間を上げます。不審者を必ずとらえて見せてくださいね」

 伯爵夫人は、あたしを抱いていた腕を放しながら呟く。誰かに聞かれないようにしているみたいな、声音だなとあたしは思う。

 父ちゃんが自分の側の扉を開き。いつもの狩りをしているときの表情をする。あたしは頷いて、動き出した。


 


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