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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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一寸した冒険 23

 あたしは元来た道を引き返すことに為て、そちらの方を伺う。まだ自警団の若い衆の姿は、どこからも見えない。出くわしたら最後、厄介なことに成ることは解っている。だから、神様に祈りながら小走りに進む。何しろ、守らなければいけない人達は、お年寄りや子供が居るのだ。置き去りに為て逃げるわけにも行かない。

 あたしの武器は短弓と鎖だけだから。まして、矢筒に残っている矢は十九本。取り囲まれたら、大夫分が悪い。多少は威嚇することが出来るだろうけれど、それだけしか出来ないだろう。本当にお屋敷にいれば良かった。後悔しても、どうにも成らないのは解っているけれど。何処かの憑いてないおじさんよりはましだよね。何しろあたしは言葉に為ていない。心の中で、ぼやくだけだから。

「姫様後ろ後ろ」

 おばあちゃんが、大夫遠くから声を掛けてくる。少し早すぎたかと思って、あたしが後ろを振り返ると。必死に駆けてくるばあちゃんんの後ろに、街の若い衆が三人、こっちに向かって駆けてくる。その手には、お手頃な大きさの棒が握られている。

 そして、一人の男が足を止めて、指笛を吹きやがった。マルタイ発見て事だろう。自警団で何て言ってるか、あたしは知らないのだけれど。なんか昔を思い出してむかつくなぁ。

「糞馬鹿野郎」

 あたしは、思わず昔使ってた汚い言葉を発していた。所詮育ちの悪いあたしだから、多少汚い言葉だって良いよね。どうせこの世界の人間には、何の意味か解りゃ為ないのだ。

 ほぼ無意識に、弓を番えて狙いを定める。当たんないけれど、訓練していない人間には、恐怖を感じる位置を狙う。勿論当てるつもりは無いから、変に避けようとしなければ刺さらない位置を狙う。

 怪我をさせれば、更に面倒なことに成るのは明らかだから。三人組との出会いの時より面倒だ。

 なんか嫌な予感が為て、狙いを更に下に下げる。矢は狙ったとおりに路面に当たり。追いかけてきている男達の足を止めた。どうやったって、怪我の為ようのない位置に矢が刺さる。

 取りあえずビビらせることには成功したかな。男達の足が止まる。後から集まってくれば、その逡巡は消えてしまうだろうけれど。多少は時間を稼ぐことが出来る。他聞きっと。

 後で撃たれたなんて言ってくるなよ。面倒は簡便なんだからさ。




 

 

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