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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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一寸した冒険 22

 時間が惜しい。時が経てば経つほど逃げられなくなる。あたしは自警団なんかに、捕まるへまはしないけれど。彼奴らはそうはいかないだろう。もう少し早く来ることが出来れば、余裕で逃げることが出来たかも知れない。たらればを言っても仕方がないけれど。

「しばらく騒がしくなると思うから、しばらく我慢してね。このアパートから、撤収するから、連中が来たら逃げ出したって言っておいてね」

 扉を薄く開けて、此方の様子を眺めている、アパートの住人に声を掛けた。ここに籠もられたら、最悪アパートを壊されかねないから、警戒しているのだろう。何しろそんなことを為ても、目撃者がいない以上、取り締まることなど出来ないのである。だって、庶民の治安を守っているのが、自警団の若い衆だから。取り締まることなんか出来るわけが無い。

 本当に前世に、当たり前のようにあった防犯カメラの威力を感じる。何しろ、皆で口裏を合わせれば、どうとでも出来てしまうのだから。だから、拷問なんて事がまかり通るようになる。しかも拷問で、証言を取れたからと言って、其れが真実かは解らない。何しろ取り調べる人間が、そうだと言ってしまえばそうなってしまうのだから。

 足を止めて耳を澄ますと、街がざわざわした雰囲気に支配されているように感じる。大勢の叫び声が聞こえる。其れは犯罪者を断罪する正義の声だ。其れが明らかに此方に近付いてくる。此れって、危ない集団が近付いてくる嫌な感じだ。本当なら住人に安心を感じさせる声のはずだけれど、待ってくそうは感じられなかった。

 此れは暴動と変わらない。まだ自警団と鉢合わせしていないから、大丈夫だけれど。何だか心臓がドキドキして仕方がない。何しろ、あたしは普通の不良娘だったのだから。怖く思わない方が可笑しいと思うの。

 今、あたしは心の底から後悔している。マリアが言っていたように、大人しく屋敷にいれば、こんな事には成らなかったのだから。だって、見も知らない人達を命がけで助けよう何て、お人好しにも程がある。しかも、その人達の家族が、あたしに対して矢を射かけてきたのだから。

 本当に大人しくしていれば、今頃マリアにお茶でも入れてやりながら、領都の中で自警団の起こした、騒ぎを聞いていたかも知れない。こんな怖い思いを為ないで済んだに違いないのだ。

「すまねぇ。俺はどうなっても良いから、何とか家族だけは助けてくれ」

 あたしの背中から、男の声が聞こえてくる。その声音はマシュー君の物だろう。

「あんた。そんなこと言っちゃ嫌だよ」

 どうやらあたしの言葉は通じなかったらしい。マシュー君と、奥さんが後から付いて来た。それ以外にも、後から全員が付いてくる足音が聞こえる。

「兎に角、連中から逃げるよ」

 自警団が張っているのは、狩猟ギルドの建物の方みたいなので。そちらに向かえば、簡単に捕まる。このままここに居ても、包囲されて逃げることも出来ない。それなら、マーシャの私設保育所の方に逃げるしか無い。個人的には、そっちには向かいたくないのだけれども。こうなっては仕方がない。彫り物のお爺ちゃん達に、迷惑を掛けるかも知れないけれど、今となっては仕方がない。

 あたしは後で、土下座でも為て謝ることを決めた。姫様でも無いのに、あの人達の力を借りることに為たのだ。





読んでくれてありがとう。


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