一寸した冒険 16
「兎に角何でもいいや。早いとこ逃げた方が良いと思うけどね。自警団の連中と鉢合わせしちまったら、面倒くさいことになっちまうよ」
「その通りです。急いでギルドに向かいましょう。あそこまでは、流石に自警団も入っては来ないでしょう」
顔をハンケチで押さえながら、文菅さんが言ってきた。どうやら鼻血が未だ止まっていないみたい。いきなり殴られたのに、たいした根性だと思う。普段はぱっとしない、うらなり兄ちゃんだと思っていたけれど。ちゃんと仕事を為ようとしている処なんか、中々いい男だと思う。
タイプじゃ無かったから、普段会っていても、名前も覚えていない。今度名前ぐらいは覚えておこう。殴られたばかりで、その殴った相手を、長からの命令だったとしても、其れを遣ろうとするなんて、中々出来ることでは無い。
其れしか無いか。簡単にこの街から出られない以上、安全なのはギルドの中か、御屋敷だけれど。御屋敷には、私兵団の宿舎が有って、父ちゃんの小隊が居る。連中、あたしに矢を射かけたことで、大分怒っていたから、マシュー君はやばいかも知れない。
それに、あそこは秘密警察がウロウロしているような処だから、怖いことになるかも知れないしね。例えば、拷問とか色々為れるかも知れない。家族はともかく、マシュー君は為れる可能性有るよね。どうしよう。
なんと言っても、リントンさんは意外に怖い人だと思うのだ。ニコニコ笑いながら、怖いことが出来る人なんじゃ無いかなと、あたしは思うのだけれど。如何だろうか。
「ギルドが守ってくれるって本当か」
と、マシュー君が聞いてくる。
あたしは力一杯頷いてみせる。その辺りは、リントンさんを信じても良いんじゃ無いかと思っている。只、此れは三人組以外の家族に限るのだけれど。その辺りは黙っていよう。
流石に、この三人組のやったことは、不問にするには重すぎると思うのよね。あたしのことは、どうと言うことも無かったから、気にしないけれど。ギルドの決まり事が有るから、それに則って処罰されると思う。出も、自警団に捕まっていつの間にか、なぶり殺されるようなことには成らないと思うのだ。
密猟だけなら、追放くらいで済むと思うのよね。父ちゃんに知られたら、どうなるか解んないけれど。まあ、あたしが止めれば聞いてはくれると思うし。ボコボコぐらいで済むと思う。
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