一寸した冒険 14
兎に角他の家族に話を通さなければ、自警団が到着してしまう。ほんとに、どうやってこの事が漏洩したのだろう。父ちゃんの小隊の連中と、狩猟ギルドの人間にしか話していないから、一般人でしか無い者が知ることは出来ないはずで、小隊の連中が漏らしたとは考えたくは無いし。ギルドだって、長にしか話してはいなかったはずだ。
「兎に角人の目も有るし。ここで長話も出来ないから、あっちの家に行こうか」
あたしは、マシュー君が出てきた部屋に行くように、顎を上げて指示する。なんか悪人みたいで嫌だな。とは言っても、こんな雰囲気だと御嬢様みたいな真似事も出来ない。どうせ、平民には意味のわからない言い回しだから、通じないしね。
あたしは、賢者様に習ったことも有って、其れなりに意味を理解することは出来るけれどね。時々訳がわからないことも有るけど。其れは仕方がないよね。何しろあたしの頭には、前世日本語とこの世界の言語。しかも貴族モードと平民モードがごっちゃに成って入っているのだから。
奥の扉の中には、荷物をまとめている途中で、手が止まっている者や。何とか為ようとしているのか、あたしの顔を見た途端向かってこようとしている子も居た。他聞二家族分がここに居るみたい。全部で4人。
住所には三件分が書き込まれていたから、あの三人組は家族持ちだと思ってたのだけど、もう少し人数がいるのかも知れない。マシュー君が逃がす段取りしていたみたいだから、他にも居るのかも知れないけれど。今はこの人達に、事情を理解して貰わないと行けないかな。
せめて、あたしに突っかかってきている、女の子かな?に辞めて貰わないと行けないかも知れない。出ないと、殴ってしまいそうだ。流石にこんな小さい子供を殴るのは、気が咎めるんですけど。
「辞めてよ。私はあた達を助けに来たのよ」
辛うじて、らしい言葉をひねり出した。危なく前世の言葉が出るとこだった。通じないし、意味ないもんね。
「他には居ないの」
と、あたしが尋ねているのに、皆は惚けた顔を為てみているだけと、相変わらず攻撃してくる子供が一人。処で君、あたしのお腹を叩いても、痛いだけだと思うよ。そこは鎖の上だから。
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