夜の散歩 3
読んでくれてありがとう。
「ここで待ってろ。ご婦人に話を通してくる」
屋敷の北門の棟のところで、あたしに父ちゃんは言って、棟の中に入っていった。門の側には、大きな馬車が一台その馬車を牽引するのは、やはり巨大な馬が二頭。そのどちらも、気の荒そうな馬である。この馬車には紋章などは飾られていない。この大きさから、八人は乗れるんじゃ無かろうか。御者席には三人が乗れる大きさである。
そのどの馬も大きくて、馬車馬とは比べものにならないほど立派である。これだけで、かなり高価な馬であることが解る。あたしは今回の獲物は、結構な大人数ではないかと思う。本気なのは解るのだけれど、領主自ら指揮を執るのは危険じゃないだろうか。命令して、屋敷の自室で待っていれば良いじゃない。
棟の中から、デニム伯爵夫人が一人出てきた。その顔は、驚きがまだだいぶ残っている。彼女の後を追うようにして、父ちゃんが出てくる。その後に続いて、他の兵士さん達が追ってきた。
「貴方はナーラダ村に無行けて、明日の早朝に第二陣の救援隊とともに、ナーラダ村に向かうのではなかったの。貴方が戦うことではないはずだわ。早く部屋に帰って、寝てしまいなさい」
貴方が言うなって言葉が、あたしの脳裏に浮かぶ。勿論言葉にはしない。
「救援部隊が出るのは、早朝とは言っても、朝食を終えてからすぐ出るわけではないでしょう?」
「そうだけど。貴方は子供でしょう」
とはいっても、あたしは十二歳+十七歳だから、結構な大人だったりする。
「日が上がる前に、決着付けちゃえば良いじゃないですか。父ちゃんに手伝いをするだけだから、そんなに危ないことじゃないし」
「う・・・・。でも危険なのよ」
なぜか心配している様子に、あたしは違和感を覚える。自分の娘だと気付いてるのだろうか?
「俺の目の代わりになって貰うだけだから、全く危険ではない。俺の娘は下手な男よりは強いんで問題にもならない」
父ちゃんは、そう言いながら、私の頭をぽんぽんと軽く叩く。どことなく自慢げな表情。
あたしはそう言うことにしておく。少しえげつない喧嘩の仕方を知っているだけ。ちゃんと訓練している者にはかなわない。其れは骨身にしみて知っている。少なくとも、父ちゃんには全くかなう気がしないのだから。
最も十二歳の娘に、負けるようじゃ兵士なんて遣ってられないだろうけどね。ただ、同じ村の子供の中では一番強かっらしい。らしいというのは、九歳の頃から相手してくれる子はいなくなってしまい。ニックだけがまともに相手してくれた。だから、自分の強さは解っていない。
今回父ちゃんの手伝いは、狙撃手の助手になるのかな。狙う相手との距離と風を読んで、正確な角度を伝える仕事になると思う。これまでも、狩りのさいに何度も手伝ったことがあり。夜も経験済みだった。