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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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一寸した冒険 10

 あたしが近付くと、今は彫り物が見えまくりなお爺ちゃんが、ホッとした顔を為て足を止めた。大分息が切れているみたい。あたしは気の毒なこと為た様な気がした。思わず謝りたくなったけれど、其れはなんか違うような気がしてやめておいた。

「姫様いったい何処に、何をお遣りにおいでになるんで」

 何だか普段使っていないような、敬語であたしに尋ねてくる。慣れない事はしない方が良いと思う。実に話しづらそうだ。

 あたしは連中の家の住所を言って、その家族までも自警団の標的に成ってしまっているかも知れないから、匿いに行くのだと言った。その事を聞いた、お爺ちゃんはあきれたような顔を為たけれど。

「姫様は相変わらず、お人好しなのですね。良いでしょう。俺も最近の若いもんには、腹も立っていたもんで。お手伝い致します」

 このお爺ちゃんは何を言っているのだろう。あたしがこの格好で、この辺りに来たのは初めてなのに。まるで以前から知っていたみたいな口ぶりだった。誰か人違いしているのでは無いだろうか。何だかマリアと勘違いしているようにも、思えないのだけれど。

 結局お爺ちゃんは、あたしに連中の住所に行くための道順を教えてくれた。最初から地元の人間に、聞いてから走り出せば良かったんだな。焦っていたから、色々と見落としがあるのかも知れない。聞いてから走り出せば、今頃現場に到着していただろう。失敗したな。

「済みませんが、俺は姫様について行けそうにありません。後から行きますんで、待っていてください」

 そう言うと、お爺ちゃんは、息を切らしたまま、元の方に走り出した。後から追いかけてくる人が、路地の向こうに見えてきていた。この人が一番早く追い着いてきたみたいだ。

「危ないよ」

 あたしはそう声を掛けたけれど、お爺ちゃんは何でも無いという手振りを見せて走って行く。何だか背中が笑っているように、此れから楽しい遊びに向かう子供のように、あたしには見えた。

 あたしは路地裏を全速力で駆け出す。此れで間違えなければ、あと十分も掛からずに着けるだろう。


読んでくれてありがとう。


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