一寸した冒険 7
マーシャの私設保育所に到着した。今は保育所から子供の声は聞こえてこない。何時もなら、遊んでいる小さな子供笑い声や泣き声が聞こえてくるのに、しんと静かに為ている。ここからさほど遠くない場所に、荒っぽいことで、知られている自警団が集まっている。危ないから室内に入っているのかも知れない。
この屋敷の敷地に中には、馬を入れることが出来ない。だから通るだけに為ておこうと思っていた。たとえ治安が良い場所だからと行っても、路上に貴重な財産である、オウルを繋げておけるわけが無い。戻ってきたら、何も無かったなんて事だって考えられるのである。
この辺りに住んでいる人達は、私兵団の元兵隊か、現隊長クラスが住んでいる。この時間だと、現役の兵隊はいないけれど。引退した隊員過疎の家族がいるはずで、マーシャおばさんに預けることが出来なくても、近所の人に預けることが出来るだろう。
あたしがそんなことを考えて、オウルから降りたころ。近所の家から、年配だけれど、結構体格の良いお爺ちゃん達がでてきた。其れと、良い感じに年をとった、奥様達があたしの方を眺めている。
「姫様どうなさいました」
この寒いのに、麻の上着にズボンだけを着たお爺ちゃんが、声を掛けてきた。よく見ると袖口から、犯罪者であることを証明する彫り物が入れられている。
この辺りに住んでいる人の中で、大変珍しい立場の人だろう。その割に、他の人達から嫌われている感じが為ない。前世の仲間の中にも、彫り物を入ていた奴は居たけれど。ここに居るのは先代の時代から、この領地を守っていたような人達だ。
リタをマーシャおばさんに預けるときに、きんじょに住んでいる人のことも、父ちゃんに頼んで調べて貰ったから、危ない人では無いはずだ。
「実はこの馬をマーシャおばさんに、預かって貰おうと思ったのですが。一寸簡単には出てきてくれそうも在りませんね。もし良かったら、この馬を預かっていただけませんか」
あたし、何言ってんだろう。この人は明らかに元犯罪者なのだから、オウルを預けたら、売り飛ばされるかも知れないのに。
あたしの言葉が終わらない前に、周りにいる人達が一斉に言葉を掛けてくれる。その声は十人を超えていた。この近所の家に居る人達が、出てきたみたい。お爺ちゃん達の後ろには、若いお母さんが泣きわめく赤ん坊をあやしながら、此方を眺めている。其れを年配の奥様が、覗き込んでいる姿が見える。
老人の数の方が多かったけれど、老若男女が集まってくる。そう言えば、あたしはご近所さんの顔は見たことが無かったな。父ちゃんがこの辺りは治安が良いって言ったから其れを鵜呑みに為ていたな。
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