一寸した冒険 6
何時ものように歩行者も多く、荷物を載せた荷馬車も多く。町中を通るのは、簡単では無い。それでも、路上にいる街の衆があたしに道を空けてくれる。それでも流石に、並足で進むしか無い。
この速さで馬に乗っていると、中には街の衆に声を掛けられる。流石に不思議に思う人もいるのだろう。デニム家の紋章の刺繍されたサーコートを着た女の子が、朝の混雑している時間帯に、馬に乗って来ることなんか無いだろうから。
時々表でひなたぼっこを為ていた、お年寄りが驚いたような顔を為て見詰めてくる。そして、徐に家の中に駆け込む姿が見える。気になるけれど、いくら何でも訳を聞くわけにも行かない。今は急いで密猟者達の、家に向かわなければ行けない。自警団と鉢合わせに成りたくは無いから、急がなければ。
領都の造りは、基本的には馬車が通れるくらいの道幅がある。それでも、馬車が2台並んで走れる広さは無い。馬車が通るときは、お互い譲り合いながら移動するのである。其れは乗馬為ていても同じ事に成る。基本的には、歩行者優先に為なければならないのだ。
そして下町の方に向かえば、更に道は狭くなる。こうなると馬に乗っているのも考え物で、細心の注意を払って向かわなければ行けない。対抗する方から、荷馬車でも来よう物なら、馬に乗っている方が道を空けなければならない。
流石にサーコートの効力は、若い人には効力が無かったみたいで、こちらに向かってくる荷馬車には、道を空けなければならなかった。折角簡単に門を抜けることが出来たのに、此れでは意味が無い。だからといって、オウルを乗り捨てるわけにも行かない。
あたしは次第に、マーシャの保育所の側を通ることに為たことを、後悔し始めていた。先に狩猟ギルドに、オウルを繋いで走れば良かったかも知れない。そうすれば、今頃目的地に着けていたかも知れなかった。
でも、今からでは余計に時間が掛かる。それなら、マーシャの私設保育所の側なら、オウルを繋いでおいても盗まれる心配はしなくても済むかも知れない。なんと言っても、あそこは治安が良いのだから。心配しなくても済むだろう。
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