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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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一寸した冒険

 屋敷から使用人用の出入り口を使って、庭に出ると何時ものように庭師達が手入れを為ている。少し冷たい風が、あたしの頬を優しくなでて行く。勘違いを為た、木が所々で花を付けていた。

 あたしは定番の胴着にズボンという出で立ちで、馬屋に向かって走っていた。腰に下げた矢筒が少し走るのに邪魔だった。短弓は背中に背負っている。何時もの狩りに行く格好である。メイドとしての仕事中としてはあり得ない姿だけれど。出会う使用人達は、あたしが休みなのだろうと思っているのか、朝の挨拶を為てくれる。変に思って、質問してくる人が居なかったのはラッキーだと思う。

 馬屋まで走って十五分。意外と近い。因みにあたしの走りは、ここの私兵達の中でも早いほうだ。只、如何しても身体の大きさの関係で、飛び抜けて速くは、成れないのだけれど。やっぱり前世で倣った走り方が、利いて居るみたい。途中で部活を辞めちゃったのは、失敗だったかも知れない。部活の先生御免なさい。

 この時間なら、馬番の兵隊さんしかいないはずで、軍馬の扱いになっていないオウルなら、一言馬番の叔父さんに挨拶すれば、問題なく乗り出せるだろう。なんと言っても父ちゃんの馬なのだから。

 領都とこの御屋敷との間は少し距離がある。歩いてでは遠いため、馬か荷馬車を使わないとしんどいのだ。

 馬屋に近付くと、あたしは可笑しな事に気が付いた。何時もなら馬屋の掃除を為ている、馬番の叔父さんの姿が見えなかったからである。だからといって、人の気配が全くないわけでも無い。

 走ってきた足を止めて深呼吸をすると、慎重に足を進める。なんか違和感があるのだけれど、その割には馬たちが静かに為ているのが不思議だった。馬はその辺り敏感な生き物だったはずで、もう少しざわざわしていても良いはず。

 馬屋に入ると、今日は騎兵の訓練だったらしく。この馬屋にいる馬の三分の一しか残っていなかった。馬も定期的に訓練しないと、いざという時に使い物にならない。だから、調教もかねて訓練しているらしい。

 オウルはこの馬屋の奥に繋がれていることが多かった。あたしは何時もの処に視線を向けた。そこにはオウルと、執事服をバッチリ決めたリントンさんが立っていた。


読んでくれてありがとう。


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