事態は深刻 6
マリアが廊下を歩いてきた、メイドのサリーを捕まえて、リントンさんを呼んでくるように言いつけている。本来ならあたしの仕事なのだけれど。今は無理だからである。
ここで、サリーに買い物に付き合ってくれるように、頼まれたことを思い出した。この騒ぎが終わってからしか無いかな。真逆自警団が向かっているところに、付き合わせる訳には行かないだろう。其れが怖いから付き合ってくれって言われたのだから。
何より時間との勝負になる。自警団の若い衆が来る前に、彼奴らの家族を逃がさなければならない。
本当なら、彼奴らが責任持って家族を逃がしていれば、なんの問題も無いのだけれど。怪我もしているし、自分が逃げ出すので精一杯の可能性がある。黙っていたらどうなるか解った物では無いのだから。
今ここに父ちゃんが居てくれれば、何とかして貰えるのだけれど。残念ながら、お出かけ中で相談する事も出来ない。熟々付いていない。
「私が協力できるのはここまでかしらね」
と、マリアが悪い笑い顔をして、あたしの部屋のドアに手を掛けた。
「幸運を祈っているわ」
あっさりとマリアがあたしの部屋に行ってしまう。扉を閉めた後から、部屋の向こうで此方を伺う気配が丸わかりである。これってリントンさんにも丸わかりなんじゃ無いだろうか。
なんか私泣きたくなってきた。ばれて怒られる未来しか見えない気がする。何でこんな事になってしまったのだろう。全部あの密猟者どもが悪いのだ。
ここの所、星の巡りが悪い。なんか私、悪いことでも為ただろうか。全く思い当たる節が無いのだけれど。
思わず溜息が、あたしの口から漏れる。あんまり溜息を付くと幸運が逃げていくらしいから、気を付けてはいるのだけれど。此ればかりはどうしようも無かった。
リントンさんの到着は意外に早かった。何だか呼び出されることを予測していたみたいだ。どっかの伯爵の執事と同じで、秘密警察の長だけのことはある。
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