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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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黒い番犬の仕事 2

 馬車内は気まずい沈黙の覆われていた。車窓から街の朝餉の準備の為に女将さん達が、元気に歩き回っている。彼女達の目的は、パン屋で焼き上がったばかりのパンを買うことである。

 庶民にとっては、焼きたてのパンは週に一回食べる贅沢である。そうそう焼きたてパンを手に入れられる物でもないので、普段は堅い冷えたパンを自分の所で温めて、スープと一緒に食べる。

 ヘクター・リントンは馬車に揺られながら、今後の動きを考えていた。今回、運良く自警団に情報が漏洩していることに気が付くのが、思いの外早かったから。早手回しに動くことが出来た。

 自警団に潜り込ませておいた、彼の下僕が自警団の動きを察知してくれたから、早手回しに猟師ギルドに圧力を掛けることが出来た。自警団の動きを見る限り。密猟者達はどさくさ紛れに口封じされるかも知れない。彼らは犯罪者を捕らえるのに、制止を気にしないのである。そして、その集団心理の渦の中に、暗殺者が紛れていることもあるのだ。

 実際彼は今回のことを、たんなる事故とは思っていない。此れは明らかに、奥様の大事な宝物を狙った、暗殺未遂だと思っている。これほどピンポイントで、密猟者がナーラダのリコに出会うはずがない。しかも毒矢を使って殺しに来る。

 段階なら、ナーラダのリコは黙っていたかも知れないのだから。其れを弓で狙うなど、あり得ないことなのだ。なんだかんだ言っても、何もなければ、彼女は知らん振りしていたかも知れないのだから。

 この状況を考えると、たまたまあった彼女がナーラダのリコだと知ってたはずで、それなら何故知っていたかなのだけれど、同じギルドの会員だから、顔を知っていたのはそうだろうと思うけれど。彼女がデニム家のメイド……それ以上に重要な人間だと知っていた。それとも知っている人間に命じられていた。ヘクター・リントンはその可能性が在るように感じていた。

「何処までたぐり寄せることが出来るか解りませんが、必ず尻尾を捕まえて見せますよ。出ないと、お出かけ中の奥様に申し訳が出来ませんし。引き続き自警団の動きを監視なさい」

 ヘクター・リントンは小さく呟いた。それに遭わせるように、彼の忠実な下僕が頷く。そして、にやりと笑うのだった。

「今回は、兵力を使うわけにはいきませんし。狩猟ギルドには頑張って、仕事をして貰いましょう。幸い、自警団が動くのは午後でしょうから。十分間に合うでしょう」




読んでくれてありがとう。


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