表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

440/1221

黒い番犬の仕事

 猟師ギルドの建物を出ると、ヘクター・リントンは深々と溜息を付いた。太陽の光が、辺りを照らし出す中で、今の彼の姿は少しばかり異様に見えるかも知れない。

 実際デニム家の執事が、早朝の町中に剣を携えて居るだけで、かなり目立ってしまうのだ。領都の住民は、御屋敷の執事服は知っている。流石に顔まで知る人間はいないけれど、衣装については知っている人間も多いのである。

 早朝のこの時間には、街の住人の生活が始まっている。街の其処いら中で、パンを焼く匂いが立ち上り始めている。そのパンを焼いているのは、正式に免許を持っているパン屋が作っている。其れを住人が、任意に買って食べているのである。

 このパンも、貴族階級にとっては重要な収入源となっている。小麦の処で税として、製品としてのパンに対しても税を掛けているのである。他にも色々と見えにくいところに税を掛けてはいるけれど、全体として今の処問題になって事はない。

 もう少しすると朝食の準備に、領都の女将さん達が繰り出してくる頃である。ヘクター・リントンは、あまり彼女達に姿を見られたくはなかった。剣を持つ執事というのは、異様で記憶に残ってしまう。

 迎えの馬車が、裏通りからやってくる音が聞こえる。あまり目立たないように、静かな足取りを命じているので、住人の記憶には残らないだろう。

 もう少し遅い時間ならば、デニム家の馬車などよく見かける乗り物だから、領都の人間達は気にもしないだろうが、早朝だと何か緊急の出来事があったと思うはずである。

 実際緊急事案ではあるのだが、其れを領民に知らせるような物ではないのだ。半年前の出来事は、領民にとって未だに鮮明に記憶に残っているはずで。其れを呼び起こさせる必要はないのである。

 デニム家の紋章を扉に彫り上げた、比較的地味めな二頭立ての馬車が、ヘクター・リントンの前で止まった。御者席には、どこからどう見ても普通の御者の衣装を纏った下僕が乗っている。

 ヘクター・リントンは、その御者に直ぐ出るように合図を送ると、自分で扉を開けた。御者に背を向けるようにして、彼の信頼するもう一人の下僕が座っていた。どこにでも居るような、平民の男のような格好を為ている。さっきまで、自警団の若い衆を遣っていたのである。


 

読んでくれてありがとう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ