汚い大人 7
「密猟者達を確保することは解りますが。その家族までと言うのは、どういう事でしょうか」
「自警団が動き出していることに気が付いた物ですから。貴方には急いで、事を納めていただきたく思っているのですよ。此方の方でも、自警団の人間に対して、自重するように働きかけていますが、なにぶん暴徒と変わらない人たちですから、少しでも早く決着を着けてください。でないと、猟師ギルドに飛び火するかも知れませんよ」
「何故、自警団に知られてしまったのでしょうか」
ターラント男爵は最も気になることを口に為た。あまりにも情報が漏れるのが早すぎる。まるで誰かが、意図的に流したとしか思えない。
「残念ながら。今の処情報を流した者については、特定できていません。まあ、箝口令を発動していたわけでもないですし。仕方がないでしょう。ただ、彼らが密猟者達のことをあまりにも詳しく知っていることは、気になりますが」
折角、ナーラダのリコが自警団に知らせずに、ギルドに先に報告した意味がなくなってしまった。此れがたんなる密猟だったなら、其程自警団も動かないかも知れない。彼らの本音は、貴族の狩猟場所で狩りをすることはそんなに悪いことではない。
見つからなければ、罪に問われるような物では無いからである。何しろ貴族の狩猟場所は獲物が多い。貴族の楽しみのための場所なだけで、時々は平民が、狩りに行っても良いと思っているからである。見つからなければどうと言うことも無いのだ。
今回は、ナーラダのリコをその三人が殺そうとした。目撃者を亡き者にしようとしたことは、自警団的には正義を行う好機となる。その犯人の持っている全ての財産をどさくさに紛れて、奪うことも可能となるからである。自警団の活動に紛れて、全てが有耶無耶になってしまうかも知れない。
自警団の正義は、平民が抱えている不満のはけ口だ。犯罪者に対しての苛烈な遣りようとして現れる。彼らは其れが、犯罪行為だとなれば、裁判など遣らずに刑を執行する。うっかりすると、罪を犯した者だけではなく。その家族に対しても、苛烈で厳しいことをするのだ。
彼ら自警団にとっては、犯罪を犯した者には人権など無いのである。そして、いわば集団心理の基づいて行われているため、往々にして暴走しがちなのだ。
読んでくれてありがとう。




