汚い大人 4
ターラント男爵は、ギルドを統べる便宜上、爵位を一代限りの貴族である。このギルドの運営が木賃と出来ていなければ、爵位を失うかも知れない。
先代の統治している頃に、大きな功績を挙げたために、爵位をいただいた物である。統治する領地のない、名ばかり貴族では在ったけれど。小なりとは言え、ギルドを任されている。平民と比べれば、かなり良い待遇を享受為ていた。
ギルドの長とは責任の所在をハッキリさせるための便宜的な役職で。彼がこの役職を引き受けなければならなかったのは、アリス・ド・デニム伯爵夫人からの無茶ぶりが原因である。決して口に出すことは出来ないが、責任ばかり大きくて、実入りの少ないことには不満を持っている。出来れば実入りの大きい、流通関係のギルドの長になりたかった。
だからといって、領主様である奥様に対して、敵対したいわけでもない。出来ることなら、この役職でも大きな功績を挙げて、子爵となって領地持ちになりたかった。そうなれば、名実共に貴族と名乗れるようになる。
只、問題なのは猟師ギルドの性質上。問題を解決したところで、個人的な功績となりにくいのが問題である。何しろ、ギルドの仕事は、会員である狩人を管理するのが主で。狩人達が法を守るように、にらみを利かせているくらいしか無いのである。
ナーラダのリコが遭遇した事件は、上手く処理しなければ、ターラント男爵の失点につながる。恒常的に密猟が為れていたことが解ってしまい。その事が、公になってしまった挙げ句。
まして、目撃者を密猟者が殺そうとしたと言うのだから。しかも悪いことに、その目撃者が、デニム家の使用人と言うことで、デニム家の人間から、おしかりを受けることになるだろう。
だからといって、自分が密猟者達を捕らえに行けるわけもなく。そういった実働は、彼の最も不得手とすることだったから。
だから、執務室で報告が来るのを待っているしか出来ない。自分でも情けないとは思うけれど。
捜査や追跡の技能のない、ターラント男爵が出て行ったところで、なんの役にも立たない。それならば、彼らに支払う金を準備しているしかないのだ。
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