汚い大人 2
ギルドの中で、最も信用のおける狩人六人に、報奨金を付けて追わせるようにした物の。たぶん見付けることは適わないだろう。彼らは動物を狩るのが、仕事の男達だからである。しかも、見付けることが出来なくとも、最低限の保証を為て遣らなければならない。何しろ、密猟者を捕らえるのが仕事ではなく。あくまでも、動物を狩るのが仕事の連中だからだ。
ギルドの掟を守らない者を、捕らえて罰するような能力は貧乏ギルドにはない。あくまでも、会員達同士の互助に任せてきたのである。そう言う意味では、自警団と同じ問題を抱えているのだ。密猟者を捕らえて、ギルドの決まり事に法って、罰を与える。
時には、自警団の連中のように、裁判に掛けることもなく。公で行われないようなこともあるだろう。あるいは、密猟者達を逃がすように動くかも知れないのだ。
実際、今回のように密猟を為てしまうことを、一般の狩人達はあまり悪いことだと思っていないのだ。狩りの流れで、うっかりと禁猟区に入ってしまうことは、日常茶飯事だから、その度に狩猟場所を管理している見張りに、こっぴどい目に遭っているから。そうなると貴族階級に対して、恨んでいるような者だって出てくる。当然、ナーラダノリコのことを良く思わない者も狩人仲間には居るのだ。
事情を知らない会員は、密猟者に同情的になってしまう。其れは仕方が無いことだけれど、今回は何時ものようにお茶を濁すような決着の付け方は出来ない。二重三重に問題が重なっているのだ。
「本当に難儀な事だ。遣ってしまうなら、木賃と遣ってしまえば良かったのだ。其れを簡単に逃げられるから、こんな事になる」
ターラント男爵は、内心ではナーラダのリコが、自警団の方に訴えてくれれば良かったと思っている。そうすれば、ギルドとしてのメンツはいささか傷つくけれど、密猟者達を捕らえることは出来なくても、家族から財産を奪い。彼らを血祭りに上げるか、奴隷階級に落とすことで、後始末とするだろうから。ある意味有耶無耶になってしまうのだ。
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