そして次の日 10
小隊の連中は、あたしらの前で足踏みしながら停止した。木賃と罰を受けてますのアピールを、為ている積りなのだろう。見張りなんか居ないのに、律儀なもんだ。
見張りも付けないで、罰を与えるなんて、雑な気がする。父ちゃんの教育を受けているなら、他人の目があろうと無かろうと、鍛錬を怠ったりしないだろう。鍛錬を多くすることによって、生き残る確率が上がるのだから。自分を磨く機会は逃すわけが無いのだ。
だって、手を抜いた分だけ生存確率が減るのだから。兵士に必要なことは死なないことだ。其れが父ちゃんの口癖になっている。だから、あたしも本当に、ちぃちゃいころから生き延びるための、ノウハウをたたき込まれた。
普通なら、近所の女の子と一緒に、おままごと的な遊びなんか為ていたはずだけれど。記憶にあるのは、戦う訓練と貴族並みの教養を身につけるための、賢者様からの授業の記憶があるだけだ。お陰で、近所の女の子とはあまり仲良くならないで過ごしちゃった。その代わり、村の男の子達の殆どが子分になっている。あの頃は、姉さんって呼ばれていたな。
今は小隊の連中からは、御嬢なんて呼ばれている。兵隊になんかに成ろうなんて、考える連中は、口減らしのために、家族から出てきた者が、殆どで、ほぼ貧乏人である。一歩間違えば、反社会的集団に所属することに成る。危険な者達なのである。
何しろ、親の後を継げないような、男どもは兵隊に成るか、何処かの商人か、職人の元に弟子入りするほかに生きる道がない。後は犯罪者紛いの仕事をするしか無かった。
デニム家の私兵団に、滑り込むことが出来た者達は、かなり幸運だと思う。何しろ、とんでもない乱簿者でも、規律さえ守っていれば、尊敬と其れなりの給金を貰うことが出来るのだから。
どのみち、戦争に成ったら、嫌でも戦場に狩りだれるのだ。其れは、一般人も同じ事だ。必ず巻き込まれる、老若男女に関わらずである。
そんなの嫌なので、あたしはマリアを助けたのだけれど、どうやらそれだけでは駄目みたいだ。マリアを側で守ってやれば、危険なフラグが折れると思っていたのだけれど。
何だかこの国には、飛んでもなく面倒な問題が一杯あるみたいだ。誰か優秀な、中の人が転生していれば良いのだけれど。今の処、あたしの知る限り。他に転生者は、どこにも居なかった。元不良にはとっても荷が重い。
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