そして次の日 4
「いやあ。昨日勝手に飛出しちまった、俺達にジャスミン・ダーリンさんから、おしかりを受けまして。特別訓練だそうで、鎧を着けたままこの御屋敷周りを五周走れと命じられました。どうせなら、御嬢と楽しく走れたらと思いまして」
ヤンキー顔のジャックが、楽しそうに言ってきた。
此れって、刑罰には成っていない気がする。だって、此奴らはそれぐらいなら、父ちゃんに命じられて遣っていることだ。あの騎士様も、それぐらいは、知っているはずで、命令違反に対して、何らかの罰を与えなければいけない都合上、罰にならないことを命令したのだろう。
普段走っている距離の、十倍くらいになるから、其れなりにきついかも知れないけれど。命令違反に対しての、懲罰としては緩い方だと思う。あたしのことを心配して、飛出したのは良いのだけれど。父ちゃんより偉い人の、承認を貰わないで、飛出してきたらしかった。此奴ら馬鹿だと思う。
「今日のあたしらは、鍛錬場一周の予定だけど」
あたしが今日の走る予定を告げると、野郎どもの野太い悲鳴が上がった。多少は、女の子のお尻を見ながら走れると思っていたのだろう。見るぐらいなら、父ちゃんの制裁は無いから、楽しみになって居るみたいだ。
「ねえ。御嬢せめて御屋敷一周に為ませんか。御嬢なら楽勝な距離でしょう」
「そんなんじゃ。殆ど、御嬢と御嬢様の走りを眺めることが出来ないじゃ無いですか。そんな殺生な」
因みに御屋敷一周の距離は、鍛錬場も含めるために、城壁の内側を走ることを意味する。鍛錬場ですら一周は、高校の校庭くらいの広さがあるのだ。其れの三倍くらいの広さなのだから、しかも、皮鎧とは言え着込んだ状態で、走るのってきついかも知れない。
何て正直な奴らなんだろう。楽しく女の子と走りたいだけなのだ。走ることは、全く苦にしていない。出来るなら、女の子のお尻を追いかけていたいだけのなのだ。
「いくら何でも、マリア様に御屋敷一周させるわけに行くか。今日の私は、全身筋肉痛だから、あまり無理はしたくないんだよ」
「えー。マリア様お願いです。何とか、御屋敷一周為ていただけませんか。俺達楽しく鍛錬できるんすけど」
此奴ら大分不躾な事を言ってくる。マリアが怒り出さないと良いのだけれど。
マリアは、あたしと同じ顔を為ているけれど。間違いなく伯爵令嬢なんだけどな。あたしが側に居ると、その辺り皆緩くなってしまう見たい。
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