良く似た娘。 8
「ギルド長には話しているのですけど。書類に為ているし、そっちを見てくれれば良い気がするのですが」
どうやら、ナーラダのリコは早く寝たいらしい。流石に何度も同じ事を説明するのは、面倒なのだろう。ヘクター・リントンとしては、後でギルドの報告書も手に入れる積リだが、ほおって置くことの出来ない。
「貴方は我がデニム家の人間なのですよ。だから、判断は私がします」
ヘクター・リントンは、ナーラダのリコの黒い瞳を覗き込むように為ていった。少し表情が厳しかったかも知れない。
ナーラダのリコは、溜息を付いて話し始めた。流石に二度目の説明だったから、簡潔で解りやすい物だった。ちゃんと訓練を受けた者でも、修羅馬場に遭っては、その時にあったことを憶えていることは出来ない物だ。
其れが十三歳の娘にしては、大変冷静に対処したことが伺わされる。ヘクター・リントンは、熟々ウエルテス・ハーケンの奴はどんな育て方を為たのだろうと思った。
時々村娘が顔を出すけれど、男達に襲われた内容を木賃と第三者に話すことが出来るのは、対した物だと思う。大人ですらこれほど上手く話せない。
「私が話すことが出来るのはこれくらいです」
「大変よく判りました。処で、君は相手に何か思うところがありますか」
ヘクター・リントンは、ナーラダのリコに長い時間を掛けて今日のことを話させた後、犯人に対してどう思うか聴いてみることに為た。
「私的には、もう良いかなと思っているわ。だって、怪我したのは彼奴らの方だし。たぶん、この辺りでは仕事が出来なくなるだろうし。何処か別の場所に行くなら、もう顔を見ることもないだろうしね」
「詰り事故だから、問題を大きくしたくないのですか」
「あんまり、これ以上厄介ごとに関わりたく無いかな」
ナーラダのリコの顔には、流石に疲労の色が窺える。本音は此れぐらいで寝たいという処だろう。ヘクター・リントンは、彼女を解放して上げることにした。
「ありがとう。お疲れ様」
「あ、お休みなさい」
ナーラダのリコが、ヘクター・リントンに挨拶を為て、部屋を出る。其れを確認すると、彼は溜息を付いてメモ帳に細々とした文字を書き込む。
彼女は自分が狙われたとは思っていないようだけれど、彼の印象だとあわよくばという意志を感じるのだ。密猟者が暗殺者だとは思わないが、そうなるように仕向けられているような気がするのである。
下僕を為ている男が、足音も立てず近付いてきた。
「取りあえず密猟者を追ってみましょう」
下僕は、彼のその一言を聞くと、足音も立てずに秘密の扉を開けた。
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