良く似た娘。 6
ハーケンの奴が帰ってくる前に、密猟者を捕らえるか、この街には既に居ないということを掴まなければ、安心して眠ることが出来ない。何しろ、今のハーケンは娘のことになると、常軌を逸する行動をとる。
何しろ、十二歳の娘のお尻を触っただけで、手の骨を折るのだから。今回のように、殺そうとしたなんて知ったら。どれほど恐ろしいことになるか解ったのもでは無い。
兎に角早く処理してしまって、ハーケンの奴には、知られないようにする。流石に殺人事件になったら、握りつぶすなんて事は出来ないのだから。
兎に角、奴が留守の時に起きた事件で良かった。そして、ナーラダのリコが無事だったことが、何より幸運な事だと思う。
「じゃあ、使用人用の出入り口から回っていきますね」
ナーラダのリコが、何時ものように挨拶すると。彼女は踵を返して、使用人用の出入り口に向かおうとする。
「構いません。一緒に行きましょう」
「え、でも」
珍しくナーラダのリコは、私の言葉に躊躇する仕草を見せた。普通の使用人なら、この正門を使うことに躊躇するのは当然だけれど。そのようなことを気にする娘では無かったはずで、サンドラの教育が進んでいるようである。
「私が良いと言っているのです。誰に気兼ねするようなことはありませんよ。それに、私の執務室には下働きが、二人居ますから可笑しなことを言われる心配はありませんよ。それに、貴方に手を出したらどうなるかは、良く理解しておりますから、心配要りませんよ」
「その辺りは心配していません」
ナーラダのリコは、私について歩いてくる。近くに来ると、彼女の汗の臭いが鼻腔を刺激する。普通は嫌な匂いのはずなのに、何処か甘い感じが為た。
「そうですか。私はそれないリに信用されていると言うことですかね。ありがとう」
「変な気を起こすような人間は、其れなりに解りますから」
ナーラダのリコは、歩きながら応えてきた。彼女の顔には、良い笑顔が浮かぶ。
今日は大変なことがあった割には、大変落着いていた。こう言った荒事に、彼女は慣れているのかも知れない。でなければ、今こうして私と話してはいないだろう。
ハーケンの奴は、どういった育て方を為たのだろう。十三歳の少女らしくない。まるで、色々なことを知っている大人の女性のように見えるときがある。
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