良く似た娘。 5
「今日は色々と申し訳ありませんでした。こんな事になってしまって。心から反省しております」
ナーラダのリコが内心の反発心を隠すように、頭を下げた。そんなところも奥様に似ている。
「無事で良かった」
「御嬢は悪くありません。密猟者の方が悪いんですよ」
迎えに行った兵の中から、ナーラダのリコを庇う声が上がった。確かジャックとか言った兵士だったか。顔を赤らめて、私に反論してくるところなど、頼もしく感じる。たとえ上司であったとしても、意見をするのは悪くない。
「貴方に聴いておりませんよ」
「リントン様。俺達を密猟者の捜索に出してください。街の奴らに任せておけない」
金髪碧眼の兵士が声を上げた。確かレイという訳あり君か。本当はこんな愚連隊のような、小隊に置いておきたくは無いのだが。何しろ隊長がハーケンだと、強い部隊になるけれど管理するのが難しい。昔の私を見ているようで、なんとも言えない気分になる。
「自警団に捜査を任せたのですか」
ヘクター・リントンは、方眉をつり上げると、ナーラダのリコに尋ねた。街の自警団に頼んだのなら、だいぶ厄介なことになるだろうから、此方の方でも捜査しなければいけないかと、彼は考えながら……。
「いえ。ギルドにお願いしておきました。自警団の中にも、ちゃんとした者は居るのは知ってますけど。此れはギルドの方が良いかなと思った物で」
ナーラダのリコが、私の質問に答えてきた。単純に自警団の門を叩かなかっただけでも、良い判断と思う。
彼女は自警団の問題を理解している。そして、ギルドの政治的立場をも把握している。
「それなら問題ないでしょう。君たちは明日も訓練の予定があるのでしょう。君たちは畑違いのことをする必要はありません。まして、隊長が留守なのだから、大人しくしていて下さい」
この愚連隊が、街に出て捜査などで来るわけが無い。間違いなく厄介ごとを量産するに違いないのだ。何しろ隊長は、あのハーケンなのだから。
私には、此奴らが小型のハーケンに見えてきていた。戦争になれば、頼もしい戦力になるだろうけれど、指揮官の居ない現状だと何をするか見当も付かない。
「リコさんは、遅くなってしまいましたが、私の執務室で報告してください」
私は彼女に、正面玄関を使うように促す。使用人用の出入り口まで回っていると、時間が掛かりすぎる。最悪、サンドラに捕まると、どれだけ時間をとられるか解らない。
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