屋敷へ……。3
あたし達は馬の背に揺られながら、既に日が落ちて真っ暗になった街の道を、北門に向かっていた。冬が終わったとは言え、夜になると寒い。
あたしは、こんなに遅い時間まで掛かるつもりでは無かったので、胴着だけでは寒い。着替えを用意してこなかったことを後悔し始めていた。何だか今晩は、妙に冷え込んできている。
あたしの頬に当たる、乾いた北風が明日は、快晴だと言うことを知らせてく入れていたけれど。何だか明日起きるのが辛くなる予感が為た。
明日はなんちゃってメイドのお仕事が待っている。灯の当番では無いけれど、御屋敷に住んでいるメイドとしては、早朝からお仕事が割り振られているから。その仕事を木賃とやらないと、メイド長のサンドラさんに厳しく叱られる。
「たぶん。彼奴らが迎えに来てると思いますよ」
唐突にレイが話しかけてきた。
「何言ってるのよ。皆今頃は寝てるわよ」
「そんなことは無いですよ。何しろ御嬢は、俺達の宝物ですからね。あんな事をした奴らに対して、怒るのは俺達だって同じですよ」
レイの言葉は、冗談を言っている雰囲気が合った。でも、その言葉には危険な感情が交じっているような気がした。
「真逆、あんた達で落とし前を付けようってんじゃ無いでしょうね」
一応軍隊なのである。其れが勝手に、犯人捜しなんかし始めたら、かなり厄介なことになる。そんなことにならないように、猟師ギルドにこのことを報告したのだ。
父ちゃんが留守に為ているときに、勝手に軍隊が動くなんて出来るわけが無いのだ。其れが少数だと言っても、私ごとで動くなんてとんでもない。
「辞めてよね。一応彼奴らは、返り討ちに為たのだから。ギルドに任せてよね」
「御嬢が相違のなら、僕は良いけど。御嬢が彼奴らを説得してくださいね。なんせ、ジャックが怒っていたから。どうなるか解らないですよ」
間違いなくレイは面白がって居るみたいだ。実に楽しそうな顔を為ている。此奴はこう言った、ごたごたを楽しむ悪癖の持ち主だった。
赤々と松明の灯りが、北門を照らし出している。何時もと違い、既に大きな門が開けられている。その門の前には、八騎の騎兵が完全武装で待機姿勢を為ている。
「な、御嬢。止めないと大変なことに成りますよ」
と、レイは笑いながら言った。
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