屋敷へ……。2
「このままお泊まりかと思ったよ」
ギルドの馬番の叔父さんが、なんかホッとした顔で言ってきた。何しろこの辺りでも、外に馬を繋いで置くと、盗まれるかも知れない。もし盗まれるようなことがあれば、少なくとも責任問題になるかも知れないのだ。
「御免なさい」
と、あたしは謝りながら。懐から銅貨を三枚取り出して、叔父さんに手渡した。
盗まれないように、見張っていてくれたことが解るから、気持ちばかりだけれど、お礼はして置くに越したことは無いのだ。何しろ、既にギルドの業務は終わってしまっている。叔父さんの業務も終了しているはずだから、二頭の馬も厩に入れられて帰ってしまっていても、不思議では無かった。
門が閉じられてしまう前に、門を出られたとしても。あたし達は徒歩で帰ることになる。流石に其れは危険すぎるので、やっぱり木賃宿に泊ることになる。
「嬢ちゃんのことは、ハーケンに頼まれてるから。それに、そっちの坊主が気の毒だからな」
馬番の叔父さんは、ちらりとレイの方を見て言った。この叔父さんは、父ちゃんがあたしのことになると理不尽になることを知っている。実際あたしのお尻を触った、狩人の叔父さんが投げ飛ばされたところを見ていたのだから、当然のことなのかも知れないけれど。
「何せ、彼奴が留守の時にお泊まりしたなんて事になったら、坊主の首が変な方に曲がるかも知れない」
「流石にそんなことには成らないわよ」
「判んねーぞ。何しろ、御前さんは嫁の次に大事な女の子だからな」
そんなことを言いながら、馬番の叔父さんは楽しそうに笑った。因みに、レイの奴の顔色が悪くなる。冗談になっていないのである。
あたしがお願いすれば、一応加減はしてくれるだろうけれど。お尻触っただけで、骨折させてしまうのだから、朝帰りさせたら大変なことに成るだろう。
「御嬢。急いで帰ろう」
レイが自分が乗ってきた馬の、手綱の手を掛けてここを離れようとする。だいぶ焦っているみたいである。
どのみちここでは、馬に乗ったところで、並足しか遣っては行けない。日が落ちてから、あまり急がせるわけには行かない。
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