屋敷へ……。
あたし達二人は、マーシャの家から出ると、小走りに猟師ギルドの在るとおりに向かう。だいぶ遅くなってしまったから、領都の門が閉まってしまう前に、この街を出なければ行けない。そうしないと、あたしとレイで宿に一泊した挙げ句。朝帰りなんて事になってしまう。
あたしは別に構わないのだけれど。レイの奴は皆に袋だたきに遭うことになるかも知れない。まあ、後で父ちゃんの特別訓練が施されるのは確定かな。
「御嬢。走り出すけど良いか」
と、レイが言ってくる。不審者が近付いてきているけれど、その為では無いことは明らかだった。
そういった怪しい奴らの相手を為ていたら、間違いなく何処かの宿を探すことになる。そして、今から取れる宿は木賃宿ぐらいしか無いのだ。その部屋で、何も起こんなくても、レイは困った事になる。
「良いよ。なんか怪しい連中に目を付けられて居るみたいだし。彼奴らをボコボコにしている間に、門が閉まりそうだしね」
あたし達が乗ってきた、馬は猟師ギルドに預けてあった。その馬を受け取って、門を出るまでに門が閉まる時間に成るかも知れない。この領都の夜の治安は、前世の街と比べることも出来ないほど悪いのだ。
絶対に女の子が一人歩きしてはいけない。あたしがメイドになったばかりの頃、真っ先に言い聞かされた事が其れだった。最近は、暗くなってもあまり気にもしないけれど。それでもね。
マーシャの私設保育所を出る時間が遅くなってしまった時点で、あたし一人なら彼女は泊っていくように勧めて来ただろう。今日は新兵とは言え、武装した兵隊さんが居るから、何も言ってこなかった。たとえ、あたしより弱い男の子だったとしても、傍目には頼もしく見えるのだろう。
正直、ギルドのあるところまで行けば。だいぶ人通りもあって、治安も悪くない。定期的に、自警団の若い衆も見回りはしているから、其程危なくは無いのである。因みに、本当に危険な場所には、自警団の若い衆は近付かない。騒ぎがあっても、まずやっては来ないのだ。
実際半年前の騒ぎの時なんかは、連中は全く出ては来なかった。奥様の名前で、禁足令が出ていたらしいから、当然と言えば当然なんだけど。
一般市民にとって、あまり当てに為て良い連中では無い。其れこの街に住む者の、常識になって居るのだ。
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