マーシャの私設保育所 11
マーシャの私設保育所での晩餐は滞りなく済み。皆満足のいく腹具合になった。後でジャックにはお礼を為なければならないだろう。なんと言っても、一羽分だけの兎肉だったら、これだけお腹いっぱいには成らないだろう。
「リコちゃん気を付けて帰るんだよ」
マーシャおばさんが、気がかりそうにあたしに言ってきた。だいぶ時間が経ってしまったから、心配に成るのも解るのだけれど。未だ酔っ払いがうろうろしているような時間では無い。散歩するには、良い時間だと思う。
「今日はありがとう。嬉しかったわ」
と、リタがあたしにハグ為て言ってきた。
あたし的には悪い気がしない。何よりも、彼女が投げやりな態度を為なくなったことが嬉しかった。時々何を考えているのか解らなくは成るのだけれど。
明日から、慣れない、なんちゃってメイドを続けられる。出来ればもう少し休みが多く欲しいところだけれど。こういう時代なのだから仕方が無いのかも知れない。仕事の内容によっては、休みは一年に一日だけなんていう物もあるのだから。
ふと、あたしの中で、休みたければアリス・ド・デニム伯爵夫人の子供になれば良いじゃ無いか。そんな思いが浮かんで、とっさに其れを否定する。
伯爵令嬢に成れば、折角マリアを助けたのに、意味が無くなってしまう。どこでどう間違って、悪役令嬢への道が開くか解らないのだから。このまま、マリアを助けていった方がましなような気がする。
あたしの仕事の環境は、他のメイドさんよりは良い条件だと言うことは解っている。本当は、使用人全員の条件が、あたし並みになるべきだとは思うのだけれど。色々な事情で、其れは無理なことなのだろう。
だから、色々と優遇されているあたしは、メイド件影武者なのだ。もしかすると、マリア・ド・デニム伯爵令嬢と、姉妹だからかも知れないのだけれど。その事は考えないように仕様と決めている。
「また来月来るからね。今度は、もっと獲物を捕ってくるから」
リタの頭をなでながら、あたしは宣言する。兎一羽じゃ格好悪くて仕方が無い。せめてあと何羽かはとってこなければ、優秀な狩人の立場が危うくなってしまう。
読んでくれてありがとう。




