マーシャの私設保育所 8
何だか話がかみ合わない。どうやらあたしに内緒で、ジャックが余計にお肉を持って来たらしい。でもそんなことは、あたしは頼んでいないのだ。襲われなければ、其れなりに獲物を捕ることが出来たろうけれど。
だからといって、あたしとしては、捕っても居ないのに、あたしが捕ったことになっているのはなんとも居心地が悪い。何でそう言う話になっているのだろう。ジャックが、そう言うことにしたのかも知れないけれど。なんかモヤモヤする。
「あの野郎。男気を魅せたつもりなんだろうな」
と、レイが囁いた。多分そう言うことなんだろう。
まあ、皆がお腹いっぱいお肉を食べることが出来るのなら、文句を言う筋合いでは無いかな。後で、彼奴には何かお礼を為なければならないかも知れないけれど。一介の抱擁とお金かな。今日の処は助かったって事で良しとしよう。
マーシャが、手押し車に肉を焼いた物を持ってきた。御屋敷でもたまにしか見ない、大皿にてんこ盛りになった肉料理。できたて何で、肉汁が随分出ている。あんまり野菜は多くない。
「折角だから、お肉中心の料理に為たの。何しろ兵隊さんが居るのだから、いっぱい食べてね」
マーシャおばさんは、にこにこ笑いながら、あたしに言ってくる。彼女は何時もニコニコしているのだけれど、今日の彼女は格別にいい顔を為ている。やっぱり狩りに出て良かったのかな。
あたしは時々は、狩りにでようと思う。考えてみれば、父ちゃんもあたしの子守を為てくれている、おばさんの処に獲物をお土産に為ていたのを憶えている。その時にはとっても喜ばれていたなぁ。
結局テーブルに並んだのは、大皿の上に鹿肉を焼いた物と、馬鈴薯を似たものとスープカップに、兎肉のスープと固いパン一切れだった。庶民の食事としては、かなり豪勢な食事だと思う。
「私、ララを呼んでくる」
と、リタが言って部屋を出て行く。パタパタ走って行く後ろ姿は、普通の女の子の姿に見えた。
最近のリタは、妹分となった三歳の幼児の面倒をよく見ている。初めて、マーシャおばさんの処に連れて来た時のことを思うと、ビックリするほど変わったなと思う。
「ねえ。貴方の本命はどっちなの」
マーシャおばさんは、あたしの耳元に口を付けて、内緒話を為てくる。ニコニコ楽しそうだ。
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