マーシャの私設保育所 7
「僕は帰った方が良いんじゃ無いかな。間違いなく足りなくなると思う」
レイがあたしに聞いてきた。それを言うなら、あたしも帰った方が良い気がする。兎肉一羽分では絶対足りない。しかも、間違いなく鍋では無く炒め物なのだ。
「それを言うなら、あたしも帰った方が良いと思うんだよね」
「折角皆で、晩御飯食べようとしているんだから。帰っちゃ駄目」
リタがあたしの手を、掴んで話さない意気込みを見せて、そんなことを言ってくる。半年前のリタとは、まるで別人のように、素直な顔を為ている。身体を売れば、食べていけるなんて言っていた十歳の子供とは思えない、良い顔に成った。
「リコ姉ちゃん。そんなに心配することは無いよ。だってねーちゃんは食べきれないほど、お肉を持ってきてくれたんでしょ。僕たちは、そんなにいっぱい食べられないから。残ったお肉は、燻製に為ようって相談している位なんだから」
マーシャおばさんの息子の、ディック少年が言った。あたしとそんなに年が離れていない。それでも、あたしのことをお姉ちゃんと呼んでくれている。
何時も黒髪を綺麗に梳っている、とてもお洒落な男の子だった。そして、あたしより少し背が高い。たぶん、お父さんに似ているのだろう。大きくなったら、亡くなったお父さんのように、立派な英雄になるのが夢らしい。今から、あたしの父ちゃんに戦い方のノウハウを教えてくれるように、頼んでいることを、あたしは知っている。
あたし的には、其れはおすすめしないのだけれど。父ちゃんの鍛錬は、小さいからと言って、手加減してくれないから、間違いなく地獄を見ることになると思う。もう少し大きくなってから、木賃とした教官に倣った方が良いと思う。そうしないと、折角良い子守を見付けたのに、其れで駄目になったら困ってしまう。
「御免ね。あたしそんなに一杯お肉捕れなかったんだ」
「嘘だー。だって、母さんは食べきれないほどのお肉って言ってたよ」
「怖いお兄ちゃんが袋を三つも持ってきたから、間違いなく食べきれないよ。だって、リコはすごい狩人だから、当然だって言ってたよ」
リタが両手を大きく広げて、ジャックが持ってきた袋の大きさを教えてくれる。なんか話が見えない。あたしは彼奴にもっいていってもらったのは、兎肉の入った小さな袋だけだったはず。
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