マーシャの私設保育所 7
マーシャおばさんは、あたしが取り出した革袋を受け取ると、中の銀貨を徐に取り出し。着ている服のポケットに入れた。どんなにいい人でも、お金は必要な物なのだ。戦争未亡人だからと言って、国から恩給が出るわけでも無い。生きていくためには、働かなければいけないのだ。
彼女は多く居る戦争未亡人の中では、だいぶ恵まれている方である。だって、生業の元手を持っていた。ナーラダ村に流れてきたキャサリンと違って、読み書きが出来る。子供を預かるだけでは無く、基礎教育的なことが出来た。だから、より多くの収入を得ることが出来る。
もしも、彼女が綺麗なだけで、他に何も持っていなかったら。今頃は、言い寄ってきた男と、そう言う関係になっていたかも知れない。あたしはそれでも良いんじゃないかとは思うけれどね。
「何時もありがとうね。あと少しだけ待っててくれれば、晩御飯の用意が出来るわ。中に入って待っててくれる」
マーシャおばさんは、あたしの手を掴むと少し強引に引っ張って、部屋に引き入れる。そうしないと、あたしが帰ってしまうと思っているみたいだ。実際帰るつもりだった。だって間違いなく、兎肉が足りなくなる。今日の獲物は一羽しか捕れていなかったのだから。
家の中に入って左の扉を開けると、其処は食堂になっている。昼間は十人の子供達が、一斉に食事が出来るように大きなテーブルと、大きさの異なる椅子が用意されている。今は、大人用の椅子が三脚用意されており。後は夜も居る子供用の椅子が三脚用意されていた。
あたしとレイが食事をすることは、決定事項になっているみたいだ。ご丁寧に食器の類いまで用意されている。その用意されている食器を見る限り、食事マナーについては、気にする必要はなさそうだった。だって、大きな皿が一つ置かれているだけだったからね。
手束みで食べながら、パンを食べる感じかな。一般的な平民の食事ではあるかな。出も兎肉一羽分で、足りるのだろうか。
読んでくれてありがとう。




