マーシャの私設保育所 6
扉が開いて、リタが飛出してきた。あたしの腰に飛び付いてくる。
「リコ、大丈夫。怪我していない」
少し瞳が潤んでいる、リタがあたしに言ってくる。どうやら彼女は、ツンデレさんだ随分素直に気持ちを見せてくれる。随分素直に気持ちを見せてくれる。
リタの気持ちの傷をおもんばかって、あたしの方が気にしすぎた事が行けなかったみたいで。マーシャおばさんに、預けるようになってから、心持ち素直になってきたような気がする。
「無事で良かった。今、晩御飯の良い有為を為ていたところなのよ。そんなところに突っ立って居ないで、上がりなさいな。勿論其処の兵隊さんも、一緒に晩御飯を食べて行きなさい」
扉の向こうに立っていた、マーシャおばさんが声を掛けてきた。何時もニコニコしている彼女は、とても綺麗だった。たしか三十二歳だったと思うのだけれど、苦労している割には顔に皺も無くて、あたしの目で見ても良い感じの女性だと思う。
なんと言っても、ポイントが高いのは化粧気が無いのに、色白で健康的な美しさがある。此れなら、若い頃は嘸もてたんだろうなと思う。
「いえ。自分は近くの屋台で食事を取ってから、戻ってきますので、お構いなく」
レイの奴が、普通に敬礼して、まるで上官に対するみたいに応えた。どことなく父ちゃんの口まねを為て要るみたいだ。
「そんなことを言わずに、一緒に食べて行きなさい。良いお肉が一杯手に入ったから。今日の食事は豪勢なのよ。リコちゃんありがとうね。あんなに一杯獲物を捕るの大変だったでしょう」
ニコニコしながら、マーシャおばさんが言った。あたしは訳がわからない。だって、あたしの今日の獲物は、兎1匹しか捕れなかったはずだから。鍋に為ないと全員が食べられないと思っていたのである。
マーシャおばさんが預かっている子供で、夜も居るのは二人居るから。兎肉を食べるのは四人も居るから、あたしやレイが食べるようになると、足りなくなる。あの匂いから判断すると、野菜炒めみたいな物だろう。
「あたしも直ぐ帰りますから」
あたしはそう言うと、胴着の隠しに押し込んであった、革袋を取り出した。この中に、金貨が六枚入っている。何しろ一ヶ月間の、リタの食事代に、教育費が入っているからね。
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