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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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お姉ちゃんは悪役令嬢?4

 ニックは少々軽薄なところのある、よく居る善人でも悪人でもない男である。あたしよりは5才は年上で、すでに成人には達している。酒好きの女好きのろくでなし予備軍。


 さすがに幼女趣味はないみたいなので、あたしは迫られたことはない。よく色町に行っては、1日の稼ぎを使い果たしている。


「さて、お嬢様。この汚れた服を取り替えようか」


 良いワンピースだけど、これだけ汚れていたんじゃ着ては居られないだろう。あたしの服を貸してやるために、ちゃんと用意してきているのだ。これでも女の子なんで、それくらいの気働きはあったりする。


 マリアは、あたしの言葉が理解できなかったらしく、めそめそ泣いている。そりゃそうかとは思うけど、すげーめんどい。


「ここで?」

「そ、ここで」


 マリアが、泣きながら聞き返してくる。当たり前のことなのに、この娘は馬鹿か。この場所で最も安全なのは、荷馬車の荷台の上なのだ。森の中は、決して安全ではないのは明らかだしね。


 誘拐犯は怪我をしている。血の臭いは間違いなくしているし、肉食獣の中には屍肉を漁る奴も居る。すでに、頭上には数羽の鴉が集まってきており。何かを期待している。


 奴らにはだいぶ弱っている個体が判別できるんだろう。早いところ森から出た方が良いかもしれない。犬あたりがやって来たら、厄介なことになるかも知れない。


「着替えだ」


 父ちゃんが、森の下生えに隠しておいた図多袋を投げてくる。その中にはあたしの服が突っ込んである。このお嬢さんの着替えにはもってこいって事だ。ほぼ体のサイズは同じだしね。


「こいつらを縛っている間に、着替えさせろ。急いでここから移動した方が良さそうだ」


 ゲームのオープニングシーンじゃ、三人の死体は犬の餌になっている。奴らは狡猾で、人間の弱さを知っている。動くことが出来ない人間は、単なる肉でしかない。上の奴らのように、死ぬのをまっていてはくれないだろう。傷ついた動物は、餌でしかないのだから。


 森の中で、あたし達が仕掛けた罠が発動した音がする。おそらく犬の悲鳴が上がる。普段なら、回収に向かうのだが、やな感じがした。


 あたしの名はナーラダのリコ。この国では、平民には姓はない。名前だけを呼び名にするのだ。まともな戸籍なんてない。だからあたしは、ナーラダ村出身のリコってことになる。


 ちなみにあのろくでなしも、ナーラダのニックって呼ばれている。


 父ちゃんには、ウエルテス・ハーケンって言う立派な名前があるけど、事情があってハーケンって名乗っている。大人の事情なのです。



 

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