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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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マーシャの私設保育所 2

 マーシャの家の側に来ると、だいぶ人通りが少なくなってくる。この家は、職人の工場からも離れたところに建てられているため、この時間になるとあまり歩いている者が居ない。この領都の夜は危険なのだ。

 何しろ人の目が無くなれば、昔のあたしより悪い奴が湧いてくるのだ。そういった連中に言わせれば、一人で夜の町中に出てくるのが悪い。何をされても文句を言えないだろう。

 それでも流石に、家の中にまで入り込んでくる者は居ないのか、少なくとも家に居る限りは安全が確保されている。わざわざ家の扉をこじ開けてまで、家の中に居る者を襲ったりはしない。そんな面倒なことをするよりは、迂闊に外を歩いているような、間抜けを狙った方が楽だからである。

 もっとも、マーシャおばさんの家を狙うような奴はそうは居ない。あそこは安全だ。なんと言っても、彼女の住んでいる家の側には、未だに現役を為ている隊長クラスの兵隊が住んでいるのだ。

 当然のことながら、あの辺りは夜の街路を一人歩きが出来る場所である。彼らを助けた英雄の奥さんを守っているのだ。だから、マーシャにリタを預けることに為たのである。だって、御屋敷以外で最も安全で、木賃としたしつけを為てくれる保育所は、彼女の所以外考えられなかった。

 父ちゃんの人脈のお陰で、彼女を知ることが出来たのだけれど。だいたい子供の面倒を見てくれるような、お人好しで教養がある人間はそうは居ないのである。

 あたしはマーシャおばさんに出会うまで、三人ほど子供を預かってくれる人に会っているけれど。その全員が、色々と問題のある環境だった。それでも、お金で子供を預かってくれるだけましだった。

 本当は、公の仕事として保育所があれば良いのだけれど。そんな物望むべくもない現実があるのだ。

 この世界には、福祉という概念自体が無い。皆自己責任で、何とかするのが当たり前な世界なのである。僅かに教会が、其処の処をになっては居るけれど。其れが出来るほど教会にも余裕が無いのだ。教会に拾われる子供は、とてつもなく幸運な子供なのである。最悪は奴隷商人に買われていく運命があった。


 





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