お土産はウサギ肉 24
前世の記憶を持っているあたしには、とても目を向けられない現実がある。犯罪の取り締まりに為たって、あたしに言わせれば信じられないぐらい酷い物なのである。
むかし不良為ていたとき、警察に補導されたことがあるけれど、彼らは真面だった。今の自警団と違って、プロとしての接し方を為てくれていたことを覚えている。いきなり殴ってきたりはしないのだ。
あまり表立たないだけで、自警団による犯罪行為もあるけれど。其れは表立つことは無い。だって、その事を調べる者は自警団員なのだから。お察しである。
「其れで良ければ、此れから手配しようと思うのだが。其れで納得して貰えるかね」
ターラント男爵が、あたしの瞳を見詰めて言ってきた。今気が付いたのだけれど、彼は初めてあたしと目が合った。
たぶん彼奴らは、間違いなく飛んでしまっているだろう。ギルドの会員に探ささせると言うことは、其れなりに会員を動員すると言うことで、あくまでも会員の協力に期待することなのである。だから、彼らがあの三人組を積極的に、動いてくれるかは解らない。何より初動がだいぶ遅れる。かくまうようなことをする者も居るかも知れないのだ。
それでも、自警団に追わせるよりは穏便なことになるだろう。まかり間違うと、裁判も無しに自警団員に私刑にされてしまうから。
「うん。それで良いよ。あたしも彼奴らをぶっ殺したいとは思わないしね」
「良いのか御嬢。なんだったら、僕たちで見つけ出して、落とし前を付けて遣っても良いんだぜ」
と、レイが恐ろしいことを言ってくる。軍隊が動けば、間違いなく血を見ることになってしまう。
なんのために、あたしが射殺さないように気を付けていたのが無駄になってしまう。なんだかんだ言っても、私兵団は暴力のプロなのだ。父ちゃんに気付かれないように、早く片付けてしまいたいと思っているのに、そんなことを為たら意味が無くなってしまう。
「良いのよ。あたしは別に怪我したわけでも無いし。せいぜい獲物が捕れなくなっただけだしね」
そんなことより、早くここから解放されたい。出ないと、折角の休みが無くなってしまう。
ガラス張りの窓の外は、だいぶ薄暗くなってきてしまっていた。あまり暗くなつてしまうと、女の子が一人歩きするのが危なくなってしまう。そうなったら、リタに、会いに行くことが出来なくなってしまうから、困ってしまうのだ。領都の夜は、決して治安が良いわけではない。
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