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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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お土産はウサギ肉 20

「彼奴は、今は居ない」

と、ターラント男爵が聞いてくる。一番気にしていることだったらしい。

「父ちゃんは、デニム夫妻と一緒に視察に出かけているんで、暫くは帰ってこないから。今のうちに今回の騒ぎを片付けてしまいたいんだよ出ないと、また面倒くさいことになると思うよ」

 何しろ今回は、お尻を触った処の騒ぎでは無い。殺しに来たわけだしね。手の骨だけで済めば良いのだけれど。最悪、死人が出かねない。

「其れは僥倖という物ですね。あれが居ない内に事態を収めてしまった方が、何かと宜しいかも知れませんね」

 ターラント男爵は、そんなことを呟くと、クリスが入れたお茶に口を付けた。因みにあたし達には、椅子一つ無いので立ったまま彼が使っている机の端っこに置かれた、ティカップを眺めているしか無かった。兎に角この部屋には、巨大で立派な机が一つと、ティセットが置かれた暖炉があるだけで、他には巨大な本棚しか無いのである。

 確かに執務机の大きさの割に、部屋が小さすぎた。部屋に合わせて机を小さな物にすれば問題ないと思うけれど。そうすれば小さなテーブルに、四脚は椅子を置くことが出来るだろう。

「では、最初からその状況を説明してください」

 ターラント男爵は、羽ペンにインクを付けながら、あたしに話すように促してくる。

 それから、あたしは暫くの間事件のあらましを語った。おおむね間違ったことは言っていないはずだけれど。細かいところでは、記憶が曖昧になっているところがあった。例えば、お喋り野郎の名前が解らない。誰かが呼んでいたはずだけれど、記憶から消えてしまっていた。

 彼奴のことは、お喋り野郎としか覚えていない。彼奴があの三人組の頭みたいだったけれど。何て言ったかしら。

 何だか前世の警察の取り調べを受けているような気がしてきた。、目の前で、あたしの話を聞きながら、ターラント男爵が紙にあたしの話したことを書き込んで行く。その書き込みは、要点を絞り込んだ内容で、事実と思われることには、なにやらマークを入れている。

 意外なことだけれど、この人は優秀なのかも知れない。只、この人はあたしが文字を読めることを、忘れて居るみたいである。所々に、恣意的な表現が入り込んでいる。此れだと、他の人間が読んだら、可笑しな事になるかも知れない。



読んでくれてありがとう。


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