お土産はウサギ肉 18
ライナス・ターラント男爵の執務室は、かなり広くゆったりとした部屋だ。その部屋の一角を占めるところに、巨大な事務机が鎮座している。どうやってこの机を入れたのだろうか。きっと此れを注文されたときの、職人さんは泣いたんじゃ無いだろうか。何しろ階段は、人が一人通るので一杯一杯だったから、どの家具を持ち込むのも、階段を使って持ち込めないだろうし。ここには重機なんて便利な物は無いのだから、全てが手作業なのだし。
その巨大すぎる机の向こう側で、中年のおっさんが、羽ペンを手に持って何か書いている。なんか漫画みたいに、机の上には大量の書類の類いが乗せられている。南側の壁には、ガラス製の大きな窓のおかげで、部屋の中が明るい。
そのほかの壁は、作り付けの本棚があって。書類の類いが押し込められている。何でこんな処に、これほど重い物を持ってこなければ行けなかったのか、あたしには解らない。だって、一番上が最も重いみたいだから、床が抜けるかも知れないからだ。
前世の時に、知り合いの部屋が抜けたことがあった。そいつはいわゆるオタクで、本なんか3冊ずつ買ったりしていたのを覚えている。その時は、阿呆だと思ったのは内緒。ほんの類いは意外なほど重い物なんだ。
「また君か。いい加減に騒ぎを起こすのは辞めて欲しいのだがな」
ターラント男爵の第一声が此れである。完全にあたしのことを、厄介な人間だと思っているのが、丸わかりだ。
彼はこの貧乏ギルドの長に為ては、仕立ての良い衣装を着ている。濃紺の上着には、銀糸で刺繍が入れられている。
「おい。うちの御嬢が密猟者に殺されそうになったんだぞ。其れを騒ぎとはなんだ」
後から部屋に入ってきた、レイがいきなり怒鳴った。手に持っていた、鏃の跡が付いている枝を振り上げている。
驚いたあたしは、彼の顔をちらりと見ると、瞳には怒りが見えない。一応怒って見せているだけみたいである。確かにここへ来たのが、ジャックで無くて良かった。彼奴なら本気で怒り出すかも知れなかった。
腐っても元王子様って訳だから、簡単に怒り出したりはしないのだろう。此れが父ちゃんだったら、いきなりクリスをぶっ飛ばしているだろう。
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