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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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お土産はウサギ肉 17

 階段を上りきると、少しだけれど廊下が待っている。この廊下の南側には、あまり大きくは無いけれど、窓が用意されている。流石にお金のないギルドだけのことはあって、この窓にはガラスがはめ込まれていない。今は木戸を開けているので、外から春の気持ちの良い風が、吹き込んできていた。

 何しろガラスは、高価な物なので、気軽に使うことが出来ないのだ。何しろ平民の家なんかには、ガラス窓なんか一つも使われていないのだから。当然貧乏ギルドが、そういった窓なんか使うことは出来ないのだ。

 廊下を二三歩歩くと、直ぐに不自然なほどどっしりとした、扉に行き当たる。この扉だけは、良く貴族の御屋敷で見かけるような、装飾の確りした扉だった。

 扉のノブは真鍮製の物で、良く出来た物だった。あたしの腕だと、鍵をこじ開けるのに、しばらく時間が掛かるかも知れない。以前来たときより良い物に取り替えられていた。

 あたしに言わせれば、こんな物に金を使うなら、一階の内装に金を使えば良いのにと思う。どうせこの程度の鍵では、本職の泥棒からは守れたりはしないのだから。だって、あたしにも開けることが出来そうなんだよ。

 後から上がって来た、ルイス女史と入れ替わり。彼女が扉をノックするのを待った。

 男の声で応えが在って、扉の鍵が開く音がする。そういえば、初めてこの部屋に通された時も、扉には鍵が掛けられていたっけ。このギルドを統べて居るライナス・ターラント男爵は、兎に角変わった人物だった。何時も何者かに狙われていると思っている。だから、自分の周りには気を遣う。

 貴族の割に、色々と細かくて、計算高いくせに何処か抜けている。だいたい、猟師ギルドみたいに、儲からない組織を統べて居るところを見れば、お察しである。

 扉が内側に開いて、見るからに強面な執事があたし達の顔を確認するように、視線を向けてくる。この人は、クリスという護衛件執事さんである。確か普通に腕っ節が強いだけの、狩人よりは強かったはずだ。

 

 

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