お土産はウサギ肉 16
ギルド長の執務室は、この建物の三階にある。其処まで上がるのには、大変狭い階段を上らなければ行くことができない。古い建物を買い上げて、無理遣り改装した建物なので、階段は狭くて勾配もきつい。おおむね使い勝手など、全く考慮に居られていない。
もっとも、この建物に住むわけでは無いのだから、必要最低限の機能さえ付いていれば良いのだろう。商人ギルドの豪華さと比べると、会員的にはなんとも言えない気持ちになってしまう。決して大きな利益を生み出すことの出来ない、零細産業のギルドらしいとは思うのだけれど。
最も獲物が多い場所は、貴族の管理している狩猟場所になっているので、どんなに頑張っても、個人の狩人が得られる利益は小さな物になってしまう。
だから、なかには貴族が管理している狩猟場所で、あの三人組みたいに猟をしてしまう者がでる。そういった事の無いように、このギルドが猟師達を管理するようになっているのだ。
勿論ギルドの仕事は、違法な狩りを取り締まるだけでは無い。殆ど文字の読めない狩人達に代わって、適正な取引が出来るように仲介する。あたしみたいに読み書き計算が出来る者は、平民には殆ど居ない。だから騙される者も居たりするから、どうあってもギルドの仲介が必要になってくる。
何しろ、平民に学ぶ必要性を感じている者が居ないのだから、識字率なんかとんでもないくらい低いのだ。このあたしは例外中の例外なのだ。
熟々前世の教育制度の良さが解る。だってあたしみたいな不良でも読み書き計算は、普通に出来るのだから。実際あの頃のは、当たり前に文字を読むことも出来た。学校に通うのは当たり前で、この世界の感覚からすると、王族並の教育を受けているのだ。
暗い急な階段をゆっくり、あたしは上がって行く。今は昼間だから、暗いとは言っても、各階にある明かり取りから、外の明かりが差してくるから、結構足下が見えている。夜目の利くあたしにとっては、これだけ明るければ、上がって行くのに問題を感じたりはしない。普段使っていないような者にとっては、この階段は危険な階段だと思う。
せめて、手すりくらいは付けたら良いのに。転んだら怪我するような急勾配なんだから。
「リコさん。足下に気を付けてくださいね」
ルイス女史が、後ろから声を掛けてきた。少し心配そうである。
レイの奴は、ルイス女史の後ろを付いてくる。この階段は狭すぎて、一人しか登ることが出来ないのだ。
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