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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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お土産はウサギ肉 14

「一応報告して起きたいのですけれど。ライナス・ターラント男爵はいらっしゃいますでしょうか」

 あたしは少しばかり丁寧な言葉使いで、このギルドの長の名前を挙げた。其れも、受付嬢にしか聞こえないように気を付けながら。あまり多くの人間に知られない、配慮が居るような気がするのだ。今更かも知れないけれど。

 ターラント男爵は、皆には名ばかりギルド長なんて、言われているのだけれど。狩猟こそ出来ないけれど、かなり出来る系の文菅さんだ。あたしは好きなタイプだわ。何よりあたしに優しい。少しロリコン気味かも知れないのだけれど、今の処実害は無いので問題なし。そんなこと今更だしね。

「はい。居ります。少々お待ちください」

と、ルイス女史が他の受付嬢達に、目配せを為てニコリと微笑む。

「上に行きますね」

 若い受付嬢が、ルイス女史の言葉に応える。なんか隠語なのかも知れない。他の受付嬢達も、落着いてここに居る猟師のオッちゃん達を裁きだした。

「お嬢ちゃんに何か悪戯しやがった奴がいたんなら、名前を教えなよ。俺がこてんぱんに為て遣るからよ」

 見るからに柄の悪い、体格の良い叔父さんがそんなことを話しかけてきた。いわゆる不埒なことをしでかした奴のことを、ギルド長に言いつけに来たと勘違いしたみたいである。

「いやいや。ハーケン所の娘さんだろう。そんな勇気のある奴がいるんなら、是非名前を教えて貰いたいね。嬢ちゃんそれならハーケンに言いつけた方が早くないか」

 どうも此奴らは、面白がって居るみたいである。以前あたしのお尻に触った奴は、触った右手を変な方に折り曲げられていた。父ちゃんの目の前で其れを遣ってしまえば、当然そう言うことになる。そいつは、三ヶ月の間、狩りにでることも出来なくなった。

「其れが嫌だから、ここに来ているんじゃ無いか」

「親父さんに知られたら、確かに再起不能になっちまうからな。ギルドに裁かれた方が優しいかもな」

 今ここに居る猟師達は、一仕事が終わって、これから飲みにでも行こうっと為ているから、頭の中は飲み屋のねーちゃんのことで、一杯に成って居る。その声音には、小娘をからかっているつもりなのが現れていた。

 実際、平民の女の子のお尻を触ったからと言って、罪になることも無い。せいぜいが、少しばかりお小言を貰う程度である。其れが、ハーケンに知られると、手を折られるのだから割に合わない。

「また、騒ぎになるのは嫌だからね」

 その後が大変だった。その事件を穏便に済ますために、金貨五枚ばかり使うことに成った。ハッキリ言って割に合わないこと、この上ない。あたしのお尻を触ったからって、相手の骨を折っちゃ駄目でしょ。




 

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