お土産はウサギ肉 13
「今日は如何しました。見たところ獲物は無かったみたいね」
綺麗な制服を着た彼女は、ポーリーナ・ルイス女史だったと思う。確か男爵家の四女だったはずで、二十歳にも成って、未だに独身を貫いている。この世界的には、行遅れになるのかも知れない。でも、いい人だと言うことは知っている。
あたしみたいな、子供に対してもまともに対応してくれる。其れが仕事だから、当然の事ではあるのだけれど。中には馬鹿に為てくる人も居るのだ。
「一応兎は捕れたんだけど、邪魔が入ったんで、それ以上取れなかったんだ」
「御嬢は密猟者に、襲われたんですよ」
直ぐ後ろにいた、レイが少し声を潜めて囁くように言う。他の猟師に声が聞こえないように、配慮している積リなんだろうけれど。其れはあまり意味が無い。今ここに居る連中は、本職の狩人何で、多少声を潜めただけでは聞き逃すことは無い。何しろ、小さな音を聞き逃すことで、命を落としかねない商売なのだから。
周りに居た連中の話し声が途絶えた。ピンと張り詰めた空気に、迂闊にそれを言ってしまった、レイが驚いたような顔を為て、あたしに助けを求めてくる。
あたしは、軽くレイの胸に肘を当てる。勿論其処には、支給品の皮鎧があるから、それほど痛くは無いのに、レイは大げさに痛がった。少し失礼だと思う。
「少し勘違いが過ぎるわよ。こんな可愛いあたしが、襲われて無事で居られるわけ無いわよ。大げさなんだから。からかわれただけよ」
張り詰めた空気が、また元のように緩んだ。小さな女の子が猟を為ていれば、中にはからかってくる奴も居る。その話だとあたしは言ったのだ。
何しろギルドとしても、密猟というのはかなり面倒なことなのだから、あまり噂になることは避けたいはずで。まして、同じギルドの会員を殺そうとしたら、とんでもない重い話になってしまう。
「一寸待っていてくださいね」
ルイス女史は、硬い表情でそう言った。流石にベテラン受付嬢。その声だけは平静を装っている。少なくとも、彼女の顔を見詰めていなければ、尋常なことが起きていることに、気付かないだろう。
「御嬢。すんません」
レイが、あたしに謝ってくる。そう言う態度も、出来れば後にして欲しいのだけれど。いったい、王族としての教育ってどうなっちゃっているんだろう。
第三王子だったから、其処の処は緩かったのかも知れないおけれど。そんなだから、隣の大国に踏みつぶされてしまうんだ。
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