お土産はウサギ肉 12
あたしは溜息を付くと、ギルドの両開きの扉に手を掛けた。この時間帯なら、この扉に鍵は掛かっていない。真鍮製のノブを掴むとひねって、押し開く。
あたしの後ろに立っているレイは、女の子であるあたしのために扉を開ける様子が無い。何だか、あたしのことを女の子だと思っていないのかも知れない。亡国の王子様って言う設定はどこに行った。
此れがレデイファーストなのか。なんか違う気がするのだけれど。高位貴族の作法を、何処かに置き忘れてきているのか。まあ、あたしは貴婦人とは言いがたい女だけどね。
扉を開けた先は、見るからにお役所みたいな作りになっている。三人の受付嬢が、受付台の前に座っている。先客がその前で、今日の獲物を見せているのが見える。今はそれほど込んでいないから、あたしの話も早く終わるかも知れない。此れなら、ジャックにリタの処の先に、行って貰う必要無かったかも知れない。
このギルドはそれほど大きくない。何しろこの領都で、狩りを為て生業としている者は、あまり多くなかった。因みに一番大きいギルドは、商人ギルドになる。規模が桁違いだから、貴族街に建物が決定的に違うのだ。
猟師ギルドは、三階建の壁が一階部分はレンガで組まれている。そこから上の階は、木で作られている。金のないギルドだから、だいぶ以前に商人の家だった物を、買い取って改装したらしい。だから、作りに一体感が無く、貧乏くさい感じがする。
基本的に猟師は、あんまり儲かる職業では無い。勿論肉の需要はあるから、必要な物だけれども、それほど多く獲物が捕れる訳では無いから、猟師達が儲けることが出来るわけでも無かった。詰り前世で言うところの三K商売なのだ。
その上、貴族が管理している山には、平民の猟師は入ることが出来ない。其処に大型の獲物が、かなり生息していることが解っていても、勝手に入っていったら、密猟になってしまう。だから、あの三人組の気持ちも解るような気がする。
だからと言って、あたしを殺そうとして良いわけでは無いけれど。あんな事を為なければ、あたしはギルドに黙っていたかも知れないのに。流石に、襲われて黙っていられるわけも無い。レイやジャックもその事を知った遣ったしね。
あたしが、そんなことをぐちぐち考えていると、受付嬢のお姉さんが、あたしに挨拶を為てきた。順番が回ってきたのだろう。
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