お土産はウサギ肉 9
午後ののんびりした、主要街道をあたし達は三頭の馬に乗りながら、領都を目指して速歩で向かう。少しばかり急いでいる走らせ方だ。これ以上速く走るって事は、他の馬車や歩行者に迷惑を掛けることになる。そういった走りは、緊急と言い切れない今回のことぐらいでは出来ない。それに疲れるしね。
何しろあたしに、言うほどの被害は無かった。どちらかというと、あの三人組の方が被害が多かったくらいである。
何しろあたしには、お土産の予定のウサギ肉は確保済みなのだから。オマケの鶏肉を狩れなかったくらい。怪我も無かったし、別に問題は無いかな。
あたしを迎えに来たレイとジャックにとっても、あんまり急ぐ理由は、思い付かなかったらしい。実にのんびりしている。
此奴らに言わせれば、気の毒なモグリの猟師がよりによって、鬼のように強い御嬢に、遭ってしまっただけなのだ。同情はしても、なんとしても罪を償わせると思えないらしい。
「だいたいだよ。御嬢を見かけたら、黙って逃げ出さないのが悪い。口封じなんか出来るわけが無いんだから。殺されなかっただけ運が、良いと思う」
ヤンキー顔のジャックが、面白がって言ってくる。
「何で御嬢は、手加減して遣ったんですか。遣っちまえば良かったでしょうに」
「だから、こう見えてもあたしは十三歳の乙女なのだから。この年で人殺しになんか成りたくないわよ」
他に街道を歩いている人も居るんだから、そんな大きな声で言わないで欲しい。その言いぐさは、あたしが強ー女戦士見たいじゃない。見た目は可愛い女の子相手に、言うことでは無いと思う。
「俺達模擬戦で、全滅させらてますが何か」
「あの時はあたし一人で遣ったわけじゃない。他にも五人も居たはずだわ」
どうも此奴らは、あの時の全滅が悔しかったらしい。確かに後半は、あたし一人で三人を相手する羽目にはなっていたけれど。其れだって、あたしが有利な暗闇での訓練だったからじゃ無いの。殆ど言いがかりだわ。
「二人とも、おしゃべりはそろそろ止めた方が良いと思うな」
あたしとジャックの深遠な話し合いに、割って入ってくる。何時ものことだけれど、レイは周りが見えている。
領都の門の側まで来ていたのである。流石にこのあたりに来ると、顔見知りの兵隊がいたりする。そこからあたし達の噂が広まるかも知れない。そういった事は、なんちゃってメイドであるあたしにとっては良いことにならないだろう。
兵隊の中では、あたしは有名人だったりするのだから。今回のような武勇伝は、出来れば広まらない方が良いのだ。たぶん無理だろうけどね。皆暇だから、こういった話は楽しみになる。
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