お土産はウサギ肉 6
「あのね。その剣だって只じゃ無いんだからね。大事に使った方が良いと思う」
レイは元王族だったせいか、物を大事にしない傾向がある。たぶん無意識なんだろうけれど、どのような物に対しても扱いが雑だった。そんなことだから、亡国の王子なんて裏設定を持つことになるのだ。
黙って笑っていれば、良いとこのぼんぼんの癖に、デニム伯爵の私兵団に潜り込んでくるなんて、何を考えているののだろう。絶対に忠誠心なんか無いよね。
そのくせ、ゲームのエピソードでは、ナーラダのリコを庇って射殺されているのだから、全く解らない。だいぶゲームの設定からは、それているから、そんなことには成らないだろうけれど。
何しろ、あたしはあたしのままここに居るのだから、此奴が射殺されるようなことは無いだろう。
「悪い御嬢」
レイはあたしから借りた、鉈を振るって矢の跡が付いている枝を切り落とした。その枝を持ち安い様に加工した。持って帰る気らしい。
「あんたら、何で其れなりの用意を為てこなかったんだい。そんな態じゃ森の中を歩けないよ」
「いやぁ。いきなり命令されたもんだから、今日は街の中の警備が任務だったんだけど、そのまんま来ちまったんだよ」
「誰よ。そんな無茶言ったのは」
「リントン様だよ。いきなりだぜ。俺たちを捕まえて、なんの説明も無く、お嬢を迎えに行けってさ」
レイの言葉で、あたしは納得した。あたしが良く行く狩り場を知っているのが、この二人だったって訳だ。それなら、森の中を動き回る装備を付けさせれば良いのに。
此奴らが、あんまり考えないで、来ちまったせいかもしれないけれど。森の中を、あたしのことを探すのには、この格好はあまり良くない。森の中は街中と違い、結構危険な動物も居るから、其れなりの装備がいると思う。
もっとも、今回みたいに密猟者の仕事中に出くわしてしまうことなんかは、滅多に在ることでは無いんだけどね。
「処で、あたしをどれくらい待ったんだい」
「だいたい二時間くらいかな」
二人は詰り、だいぶ長い時間を男二人で雁首揃えて、時間つぶしを為ていたって訳だ。あたしを探すでも無く、只話をして過ごしていたのだろう。
「誰か見かけなかったかい」
「三人組の猟師を見かけたなぁ。そいつらが犯人」
多分そう言うことになると思うけれど。そんなに森の中を歩いている三人組が居るわけ無いし。
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