お土産はウサギ肉 5
「御嬢。随分派手にやりましたね」
兜を被り直した、レイがあたしに言ってくる。心底呆れ返った顔を為ている。
「仕方ないじゃ無い。こっちだって好きで、遭遇戦遣ったわけじゃないわよ」
出来るならあたしだって、命の遣り取りなんか遣りたくもない。あたしに気付いたら隠れるなり逃げ出すなり為てくれれば、見て見ぬ振りぐらい為て遣ったかも知れないのに。いきなり殺しに来るから、仕方なく反撃する羽目になってしまった。
レイは身をかがめて、戦闘の後を丹念に調べだした。矢は殆ど回収されており。残されているのは、矢の跡が残る木の幹だけだ。
矢だって只じゃ無いから、時間があれば回収するよね。奴ら、あたしの矢も持って行きやがった。それでも、無駄に為たのは三本だけだから良いけどね。
「後始末が上手いな。ほんとに猟師なのか疑わしいような気がするな」
レイがお喋り野郎が、倒れていたところを調べながら呟いていた。
「どういう事よ」
「んー。御嬢にやっつけられていたなら、かなり取り乱しているはずだから。必ず何か痕跡になりそうな物を落としているはずなのに、何も残っていないようだから、こういった事になれている人間なのかなと思ってね」
レイは真顔で言ってのけた。
「でも、あの時の三人組は、あんまり慣れているようには見えなかったけれどね。小悪党だったから、あたしが助かったんだと思うよ」
普通にあんな事が出来る連中なら、もう少しあたしは苦戦したと思う。やっぱり一対三のハンデ戦だから、ちゃんとした戦士が相手なら、逃げ切れる訳がない。
「そりゃあ御嬢から見たら、どんな相手でも素人に見えるでしょうよ」
そんなことを言いながら、レイが彼奴らの矢の後のある幹をショートソードで切り落とそうとしている。其れ無理だから。其れが出来るのは、いわゆる達人だけだから。
あたしの腰につり下げてあった、鉈をレイに渡した。ショートソードで遣るよりは、鉈を使った方が楽に幹を落とせる。うっかりすると、支給品である剣を駄目に為てしまうのが落ちだ。
支給品とはいえ、決して安い物では無いのだ。大事に扱った方が良いと思う。
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