お土産はウサギ肉 4
「まあ良いじゃ無いか。彼奴は気付いていないんだから。それに馬の側の方が安全だろ。彼女持ちはなるべく危険なところに行かない方が良いだろ」
「何であたしは良いわけ。あたしなんか、か弱い乙女なんですからね」
「何言ってるんだ。御嬢は僕たち相手に、最後まで生き残るだろう」
レイはこの間、小隊の連中とやった模擬戦のことを言っているのだ。あの時は、鏃の着いていない矢を使っての模擬戦だった。あの時は、六対六の市街戦を想定した訓練に混ざったのだけれど。最後まで生き残ったのはあたしだけだった。
それ以来、小隊の中じゃ歴戦の戦士扱いされることがある。そんなこと無いんだけどね。あの時は、暗くなってからの訓練で、あたしに有利な設定だったんだし。ノーカンで良いんじゃないかな。因みにその状況を設定したのは、間違いなく小隊長遣っている父ちゃんだ。
なんだかんだ言っても、父ちゃんは娘に甘かったりする。そのせいで、今回の遭遇戦のことを聞いたら、あの三人組の命の危機かも知れない。
あたしはあの連中の名前は聞いているから、ギルドの構成員なら簡単に特定できるだろう。其れがモグリだったとしても、時間は掛かっても捕らえることが出来る。
それに手傷を追わせているから、逃げ出すに為ても時間が掛かるかも知れない。出来ればちゃんとした衛視に捕まって欲しい。だって、折角殺さないで居たのに。父ちゃんにくびり殺されるところなんか見たくない。
なんせ、あたしは無傷で済んじゃったし。狩りが出来なくなった程度の損害だしね。
あっちは結構痛い思い為ているだろうし。他にやらかしていないなら、領都から飛んじゃうだけでも、かなりのお仕置きになるだろう。今度見かけたら、只ではおかないけれど。
あたしが奴らに出くわしたところまで向かうと、そこには誰も居なかった。かなり派手な戦闘だったから、下草は踏み荒らされて居るし。奴らの獲物だった、鹿の残骸が残されている。
たぶん屍肉あさりの獣が、さっきまでここに居たのだろう。オルテガ君とお喋り野郎は、マシュー君が連れて行ったみたいだ。なんだかんだ言っても、マシュー君は仲間思いの良い奴なのかも知れない。
手負いになった仲間を置き去りに為なかっただけで、マシュー君に好感を持つ。だからと言って、お友達になりたくは無いけどね。殺そうとしてきただけで、ヘイトの対象になると思うの。
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