お土産はウサギ肉 3
二人の男達の表情は、話を聞くに従って、なんとも言えない物に変わってきた。笑っているのか怒っているのか解らない表情。
「そいつら馬鹿だな。弓持ちお嬢に三人くらいで、対抗できるわけ無いのに」
ジャックが半笑いで言い放つ。
「で、如何します。御嬢が戦った時から、どれくらい経っています」
レイが尋ねてくる。
「たぶん三時間は経ってしまってるわね。だいぶ森の奥まで逃げ込んだ物だから、ここに戻ってくるのに手間取ってしまったわ」
実は少し森の中で、道に迷っていたのは話さないでおこう。何となく格好悪いし。たぶんバレバレだろうけど。自分から言う必要は無いのだ。
「兎に角現場に行ってみましょう。どうせギルドに報告しなきゃ成らないでしょうし、俺たちも隊長に報告しないと、鉄拳が飛んできますんで」
「一寸待て。何一人で決めてんだよ。俺が見に行くからここの馬を見張っていろよ」
「そうか。なら、ゲームで決めようぜ。」
レイがニカット笑うと、懐から銅貨を一枚取り出して、ジャックに見せた。何時ものことだけれど、此奴らは何かにつけて此れだ。
まあ、あたしはそれでも良いんだけどね。たぶん奴らは既に何処かに逃げてしまっているだろう。現場にあったとしても、矢が見つかるだけだ。
万が一奴らが残っていたとしても、此奴らでも本職の兵隊だし。弓を持っていなくても、真面に動ける奴が一人しか居ないのだから、それほど危険じゃ無いだろう。
出くわしたら、声を上げれば馬番も加わるから、間違いなく捕まえることが出来る。なんと言っても、二人は手負いなのだから。矢だって、のこっていないだろうし。
ただ、此奴ら森に入るのに武装はショートソードのみって、馬鹿に為すぎだと思う。此奴らが着ている鎧だって、革製の物だから、矢が刺さるんだけど。
相手が毒矢を撃ってくることは説明したし、そに危険性は骨身にしみているはずだから。あたしには言うことが無いかな。
あたしが困っている前で、レイが銅貨を投げた。そして、落ちてきた銅貨を手の中に隠す。
ジャックが裏と言って、レイが、良い笑顔を為ながらコインを見せた。表だった。
「じゃそう言うことで、御前は馬の面倒を見て否よ」
ジャックから少し離れたところで、あたしはレイの後ろ頭を叩いた。如何様だったのである。
「痛いなぁ」
「たいした手業よね」
「何のことだよ」
「見せたのは最初の銅貨じゃ無いよね」
レイは投げた銅貨を、見せる時にすり替えたのである。時々此奴はそんなことをする。結構見事な手品だ。
手品の種は簡単だった、此奴は裏だけの銅貨と表だけの銅貨を持っていたのである。其れをジャックが裏表を決めたときに、見事な手さばきで入れ替えた。
この手品は、ニックも得意としていたから、あたしも気が付くことが出来た。何となくニックがやるときの手の動きに似ていたからね。
「あのさ。一応ここからは、危ない奴らがいるかもな場所だから、せめて兜くらい被りなよ」
レイは、相変わらず兜を被るでも無く。腰のベルトにぶら下げていたのである。こんなだから、父ちゃんの小隊は愚連隊って呼ばれるんだ。
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