散々な休日 9
本街道を走ること二十分。
あたしは何時も使っている裏道への分岐点に着いた。ここから、馬の足で十五分もはいったと頃に、オウルが何事も無ければ待っているはずだ。ここまで走りながら、腰に下げている矢筒が邪魔になってきた。何しろ彼奴らに遭ってから、ほぼ全力疾走だったから。流石に疲れてきた。
正直命がけだったから、なりふり構わないで走りまくった結果。水袋の中に入れておいた、水も水で薄めたワインも飲んでしまった。因みに、僅かにワインの味が解る程度の極薄である。こんな事にあら、塩水でも用意してくれば良かった。
あたしは喉が渇いてきて、身体に嫌な疲労感が堪ってくる。荷馬車のオッちゃんに助けを求めないで走り出してしまったことを後悔し始めている。正直しんどい。
そういえば、未だ昼飯を食っていなかった。走るながら、食えるのは干し肉だけで、パンは水が無ければとてもじゃないけれど、堅くてふやかさなければ、食えた物では無い。前世に良く買い食いしていた、菓子パンが懐かしい。
兎に角この食糧事情は何とかして欲しい。菓子パンを用意しろとは言わないから、普通に食べて美味しいパンが食いたい。
貴族階級の者でも、外で食べるためには出来るだけ水分を飛ばした、堅いパンなのだから、仕方が無いのだけれど。何処かにパン作りの知識を持った、転生者はおらんのだろうか。あたしは、あんまり前世では女子力の有る方では無かったので。そういった事は得意じゃ無いのだ。
そんなことを考えながら、走ること十分。
あたしは、足を止めて身を低くして、下草の影に隠れるようにした。流石に息が苦しい。此れからは気を付けて進まなければならない。
まだ、オウルの場所まではかなり離れているのだけれど。迂闊に進んで、奴らとまた出くわしたくは無い。
恐らくはいないと思うのだけれど。絶対に居ないとはいいきれない。
あたし的には、殺し合いはお腹いっぱいで。それよりは、旨い物が食べたいのだ。
奴らがいたなら、そっと回れ右して、今度こそ荷馬車のオッちゃんに助けを求めて、領都に帰る。その場合は、オウルが捕まっていたら、残念だけど諦める。オウルが居なければ、どのみち小隊の連中がやってくるから、其れを待っていても良いかもしれない。その場合には、お説教を覚悟しよう。
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