散々な休日 8
流石に日が、高くなるに従って、暖かくなってくる。それに従って、森の中の住人である。小さな虫たちが、あたしの側に集まってくる。たぶん獲物の臭いのせいだろう。
あまりぐずぐずしていると、大型の肉食獣がやって来かねない。まかり間違うと、あたしが狩られる番になってしまう。急いで本街道まで出てしまった方が良いだろう。
あたしの方向感覚だと、南西に向かえば本街道までは出られる。本街道まで出ることが出来れば、オウルが待っている場所に行くことができる。彼奴らが、オウルを見付けることが無ければ。
彼の賢い馬は、律儀に待っていることだろう。連中に見付けられたなら、逃げ出して、領都に向かっているはずだ。実はオウルの手綱は、簡単に折れる枝に結んであった。だから、あの賢い馬は危ないとなったら、逃げ出すことが出来る。そして、領都へ向かうはずで。
オウルが一頭で戻ってきたら、あたしの身に何かあったって事になるから、心配して小隊の連中が助けに来てくれるはずなのだ。因みにそんなことになったら、確実にお説教案件となる。サンドラさんの怒り顔が怖い。
あたしは何も悪いことしていないのに。悪いのは密猟者だというのに、理不尽にもお説教が待っているのだ。
前世の頃のあたしなら、間違いなく反発していると思うけど。今は皆に心配掛けたからだって、解っているから素直に反省もするし。謝ることだってする。
出も、出来ればあまり大事に為たくは無いかな。あたしも彼奴らを撃っちゃってるしね。令嬢突きのメイドの遣ることではないかも知れないし。ただ、此れは間違いなく正当防衛だと思うの。其れが、今のこの世界で通じるかは微妙だけど。
そんなことを考えながら、あたしは森の中を進んで行く。とてもラッキーなことに、うっとうしかったのは羽虫だけで、大型の肉食嬢には出遭うことは無かった。
あたしの勘は当っていた。森から本街道に出るのに、一時間は掛かったけれど。おおむね思ったところに出られた。
流石に本街道。結構人通りがある。主に荷馬車だけれどね。正直ここまで出てしまえば、安全になる。
森の中と街道では、危険度が格段に減るのだ。なんといっても、人の目が有るというのは大きい。そして、領都の側だから、兵隊さん達が見回りに出ていることも在るからである。
運良く兵隊さんに出くわしたら、彼奴らのことを兵隊さんに任せて、オウルを回収に行かねばならない。
そうそう都合良く、兵隊さんが見回りにでていたりしないよね。うん、解っていたさ。殆どが、近所の村の衆の荷馬車だった。流石のあたしでも、毒矢で武装した連中の相手を気の良いオッちゃん達にさせるわけに行かない。
正しい行動としては、荷馬車のオッちゃんに助けを求めて、領都へ行く方が良いのだろうけれど。あたしは、領都に背を向けて走り出した。取りあえず、オウルを確保したかった。何より、父ちゃんの大事な馬だ。
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