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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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散々な休日 5

 結果から言うと、あたしの矢は外れた。やはり当てたくないな、と思っていたのが行けなかった。腹には当らなくて、その下の太股の付け根に当った。矢が其処に刺さっているから、中肉中背が逃げようとしたのだろう。

 中肉中背は、情けない悲鳴を上げて蹲る。見た目には致命傷を受けたように見えるかな。何だか嫌な感じに成った。

 あたしは内心ホッとしながら、次の矢を番える。治療していた大男が、此方を向いた。あたしと奴の視線がかち合う。

 大男が立ち上がる。こいつの手には小刀が握られている。短弓は足下に置きっぱなしだ。こいつは撃たなくても済みそう。

「あんたらが悪いんだかんね」

 あたしは一言叫んで後退する。うっかり日本語で叫んでいることに気付いた。だいぶあたしもテンパっていたみたいで、前世の言葉を使い倒していたみたい。

「オルテガを殺したのか」

と、大男が両手を上げていった。奴からはかなり離れているから、表情までは解らない。

「言葉解るか?」

 大男が更に手を高く上げて言ってくる。どうもあたしには、言葉が通じないと思ったみたいだ。更に大きく降参のジェスチャーをしてくる。

「あんたらが悪いんだかんね。いきなり撃ってくるから、殺されなかっただけ運が良いと思って貰いたいね」

 あたしは一呼吸置いて、この国の言葉で応えた。そう答えながら、少しずつ後退する。兎に角身体を、さらしているのは危険だと思う。未だ奴らの短弓の射程圏内なんだから。

 前世と今世を足しても、こんな事は初めてで、結構震えが来ている。全く付いていない。そりゃ結構危ない橋を渡った事もあるけど、其れは何時も父ちゃんと一緒だったし。人の命が安いこの世界でも、自分に向けて矢が飛んで来るのは初めてだ。

「オルテガは死んじゃいない。たぶんビックリして、卒倒しているだけさ。急所は外れているからね。死んだりしない」

 ほんとにオルテガだってさ。辞めて欲しいもんだ。

 あたしは兎に角ここからバックレたい。危なくて仕方が無い。ギルドの会員的には、捕らえて然るべき処に、突き出すべきなんだろうけれど。絶対無理。

 ここは逃げ出してしまいたい。もうこれ以上、命の遣り取りじみたことはしたくなかった。そう言うことは、兵隊さんの仕事だと思うの。少なくとも、十三歳の女の子の仕事じゃ無いと思う。




読んでくれてありがとう。


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