散々な休日 2
奴らが、三人も居るっていうのが厄介だ。何しろ奴らは、連携を取って大型動物を追い込むように、包囲を狭めながら矢を撃ってくるのだ。とうとう三人目の大男も、獲物の鹿を置いて短弓を使い出した。因みに北側にいるのは、お喋りな男の方だ。
奴の持っている矢が、あと一本撃てば打ち止めである。奴の腰につる下げられているのは山刀。奴に近接できれば、他の奴からの矢を気にしないで済む。それに、ここは森の中だ。木立が矢の盾になってくれる。
あたしが今まで、奴らの矢を受けないで居られたのは、森の中だという条件が合ったせいだ。よほど上手く狙いを定めなければ、当てることは出来ない。
奴らが使った矢のうち五本が、枝に当ってあたしの所まで届かなかった。しかも、あたしが弓に矢を番えながら、逃げているんで。迂闊に近付くことも出来ないで居るのだ。
矢を耐えることが出来たのも、奴らの連綴が乱れたからだけどね。本当に腕の悪い猟師で助かったわ。それでも其れ止まりだった、足を止めて狙う隙が無い。下手に足を止めたら、誰かの矢があたしに刺さる。一発食らったら、終わりだっていうプレッシャーはきつい。
走りながら矢を撃って、的に当てるためには、かなり近付かなければいけない。足を止めた瞬間、他の奴からの矢が飛んでくる。
熟々せめてあと一人欲しかった。三対一何て無理ゲーだよ。
「この糞遣ろう。ぶっ殺す」
あたしは思わず、日本語で叫んでいた。だいぶテンパってしまっている。元不良だし、地金が出るとね。
お喋り野郎が、あたしの言葉にびびったのか、慌てて矢を放った。だいぶ慌てていたんだろうな、矢はあさっての方に飛んで行った。奴の手持ちの矢は無くなった。こうなればあたしのもんだ。
お喋り野郎は、腰の山刀を引き抜く。彼我の距離は三メートル。他の奴らには、矢を射ることの出来ない距離だ。奴らの腕では、お喋り野郎に当てないで、矢を撃つことは出来ないだろう。
あたしは走る速度を落とさないで、矢を打った。見事奴の太股に刺さる。上半身は、革の胴着を着ていたしね。此方の方が有効だと思ったんだ。
何よりこいつは此れで、しばらく走れない。しかも生きている以上、仲間なら、手当てしないわけにはいかないだろう。あたしが想定している以上の屑なら、他の奴らが直ぐ追いかけてくるだろう。それでも二人だけだ。
読んでくれてありがとう。




