久しぶりの休日 3
デニム家の馬房は、とても立派なものがある。その馬の殆どが、軍馬って言われる奴で、戦う際に恐慌を起こさないように、訓練された物が殆どだ。でも、その中にも例外は居る。
たとえば、父ちゃんの飼っていたオウルがそうだ。この馬は戦闘には役立たずだけれど、荷馬車としては使い勝手の良い馬で。あたしの言うことを聞いてくれる賢い馬だ。少しばかり、ロートルであまり早くは走れないけどね。
「昨晩はありがとね。今朝も宜しくね」
昨夜は、彼に乗って近場の狩猟場所まで行ったのだ。カンテラ一つだけで、携えての乗馬である。とは言っても、空は快晴で少し掛けてきているとは言っても、明るいお月さんが夜空に浮かんでいた。あたしにとっては、ハイキング日和と言えた。
上手く罠に掛かってくれれば、野ウサギの肉が手に入る。昨夜の内に野ウサギの巣の前に、仕掛けておいたから、最低でも一匹は掛かっているだろう。リタに対するお土産にするのだ。
土産としては、野ウサギ一匹で十分だけど。折角狩り場に行くのだから、鳥でも捕れると良いのだけれど。種類によっては、そこそこの金になるのだ。
本音を言ってしまうと、デニム家の管理している山に行ければ。かなり大物の獲物が期待できるのだけれど、平民が狩りをしに行くと、法律違反になる。其れを見張るためのギルドでもあるのだろう。
まあ、それでも見つからなければ問題ないのだから、密漁に入り込む奴も居る。あたしは模範的、ギルドの一員だから、そんな危ないことはしない。ちゃんとギルドに、今晩から明日に掛けて狩りに入ることを言ってある。
別に木賃と線引きされているわけでも無し。だいたいの目安があるだけだ。あたしが仕掛けたウサギの巣は、御貴族様の狩猟場所から、かなり離れたところに仕掛けてある。此れまであそこまで分け入ったからと言って、問題になったことなど無かった。
あたしが、オウルに鞍を着けようとしていると男の声が掛かった。重たい鞍抱えるのに夢中で、此方にやってきた気配に気が付かなかった。ビックリして、後ろを振り向いた拍子に、鞍を取り落としてしまう。
「リコ嬢。おはよう」
声の主は、ヘクター・リントンさんだった。灰色の髪を綺麗に撫付けて、何時ものようにニコニコしている。怖いおじさんだ。
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